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2006.1.18(水)更新  特集/映画館に新しい風
 昨年末から今年1月にかけて、個性的な映画館が続々とオープン。2人の劇場仕掛け人の話から、「映画館の新しいかたち」を探ります。

 「一角座」荒戸源次郎さん


作り手のプライドかけて
あらと・げんじろう
 80年、鈴木清順監督作品のプロデューサーとして東京タワーの下に移動型映画館を造り話題に。03年「赤目四十八瀧心中未遂」を監督。
 昨年12月、東京・上野の国立博物館敷地内に「一角座」が出現。「ゲルマニウムの夜」(花村萬月原作)を上映するために設営された映画館だ。発案者は製作総指揮の荒戸源次郎さん(59)。今この作品を見られるのはここだけだ。

 企画当初から、専用の映画館を建てることが前提でした。原作を読めば分かる通り、映画化するうえでも暴力と性描写はどう考えたって外せない。でも映倫にレーティング(等級)は付けられたくなかった。だったら映倫を通さずに公開できる映画小屋を自分で建てるしかない、と。企画から約1年半で公開しました。

 映画館にかけてもらうのを順番待ちしているのが、今の日本の映画業界。「フィルムは腐らない」と言っても、私は映画に賞味期限はある、と思っています。撮った時の「体温」みたいなものが、時間とともに失われてしまうから。それに、結局公開されずにお蔵入りしてしまう映画が多すぎる。

 フィルムは、お客さんに見てもらって初めて「映画」となる。作り手は、どんな方法でもいいから「必ず公開するんだ」とプライドを持ってやっていかないと。自分は、そのプライドを捨てるのは嫌だ。

 作り手にとって作品は、子供のようなもの。その子が一番幸せになれるよう、映画にも映画館を選ばせてあげたい。今後製作する作品のなかには、ここ「一角座」でかけるものもあれば、一般の映画館でかけるものも出てくるでしょう。選択肢の一つとして自分たちの映画館を造ったってわけです。

 ここは映画の原点である「音」と「画面」を最優先した、映画の作り手による、観客のための映画館です。


  一角座  

 一角座(東京都台東区上野公園・東京国立博物館内、上野駅。TEL03・3823・6757)。
 「ゲルマニウムの夜」(大森立嗣監督)を上映中。少なくとも6カ月間は上映する。1スクリーン、150席。2000円(60歳以上1200円)。ともに博物館観覧料含む。1日4回上映。「世界発信」もテーマのひとつで、毎週(金)は終日英語字幕版を上映。(土)(日)(祝)は上映後に俳優、監督らによる舞台あいさつあり。2月からは毎月最終(月)休館。客席の後ろには、映画のシーンをパネル展示している=写真


 「シネマヴェーラ渋谷」内藤篤さん


若者が集う町に名画座を
ないとう・あつし
 エンターテインメントやメディア関連の法律が専門の国際派弁護士。著書に「エンタテインメント契約法」(商事法務)など。
 今月、東京・渋谷に三つの映画館が入った「Q‐AXビル」が誕生した。1月14日に桜丘町から移転した「ユーロスペース」と、邦画を中心に上映する名画座「シネマヴェーラ渋谷」が、28日(土)には「Q‐AXシネマ」が開館する。計5スクリーンを持ち、館によってはレートショー上映もあるので、一日中映画に浸れる。このミニシアター版シネマコンプレックスの仕掛け人の一人が、弁護士の内藤篤さん(47)だ。

 全国の映画祭や自主上映会に携わる人たちが、年に一度集まって問題点などを話し合う場を設ける「コミュニティシネマ支援センター」に、10年ほど前からかかわっています。その中で、「映画を見せるって面白そうだな」という思いを抱きました。5、6年前、思い立って配給・興行会社ユーロスペースの代表、堀越謙三さんに「一緒に映画館をやりませんか?」と持ちかけたのがきっかけです。

 渋谷は自分が映画をよく見に行く場所ですし、いわゆるミニシアターが一番集まっている場所でもあります。将来の映画ファンを育てたいという課題もあるので、若者が集まる渋谷を選びました。

 私が館主を務める「シネマヴェーラ渋谷」では、邦画の名作を中心としたラインナップ。作品の選定も自分でしています。奇妙なテーストのミュージカル映画を集めて特集上映するなど、様々な試みをしていきたいと考えています。旧作を上映する名画座が減った理由に、ビデオ・DVDの普及が挙げられますが、ホームシアターには無い魅力、映画館でしか味わえない独自の価値を、再認識してもらえれば良いですね。


渋谷の新館情報

  Q−AXビル  

 Q‐AXビル(東京都渋谷区円山町、渋谷駅、写真)。
 1階にはインテリアショップ「イデー」の黒崎輝男会長がプロデュースするカフェ「Theater6」が入る(1月28日(土)から)。
 ▼地下1階、2階=Q‐AXシネマ(TEL03・3464・6277、※28日のオープン以前の問い合わせは問い合わせは03・5448・0941)。2スクリーン。オープニング作品は「ブラックキス」(手塚眞監督)、「ピーナッツ」(内村光良監督)。
 ▼3階=ユーロスペース(TEL03・3461・0211)。2スクリーン。オープニング作品として「ギミー・ヘブン」(松浦徹監督)、「カミュなんて知らない」(柳町光男監督)を上映中。
 ▼4階=シネマヴェーラ渋谷(TEL03・3461・7703)。1スクリーン。2月10日(金)まで、オープニング特集「北野武/ビートたけしレトロスペクティブ」として24作品を上映中。


  シアターN渋谷  

 シアターN渋谷(東京都渋谷区桜丘町、渋谷駅、TEL03・5489・2592)。
 旧ユーロスペースの跡地にオープン。「本屋さんみたいな映画館」がコンセプト。2スクリーン。「ホテル・ルワンダ」(テリー・ジョージ監督)などを上映中。


 ※料金など、詳細は各劇場に問い合わせを。

(2006年1月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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