南国の海と空気を思わせる色合い、素朴で思わず触れたくなるような温かみ――「現代の名工」にも選ばれた沖縄県読谷村のガラス工芸家、稲嶺盛吉さん(65)の作品展が4月、神奈川県藤沢市で開かれる。
コーラやビール、泡盛などの空き瓶を溶かし、自然に生まれる色を生かしつつ、よみがえらせる。厚くて重く、陶器のようなぬくもりを感じさせる琉球稲嶺ガラス。那覇市の民芸品店に並ぶたくさんの琉球ガラスの中にあっても、稲嶺作品は一目で分かるほどだ。
琉球ガラスは再生ガラスを原料として使うため、ポツンポツンと気泡が入る。それが特徴であり、難点でもあった。泡がないことが、高品質のガラスの条件だからだ。
「泡が取り除けないのなら、全部、泡にしてしまえ」。弱点を逆手にとった発想だった。研究を重ね、米ぬかなどを原料に混入することで、意図的にガラスの中に細かい気泡を生み出す技法を確立。この「泡ガラス」は稲嶺さんの代表作となる。
ある時、溶かしたガラスに黒糖の粉末を混ぜた。するとガラスが小豆色に。備長炭の微粒子、カレー粉、紅芋など、思いつくままにそばにあった素材を試し、自由な色合いを生み出してきた。
新作は土を使った「土紋シリーズ」。「海の中のサンゴをイメージする作品を作ろうと思った」と言うように、表面がザラザラとしている。こんなガラスは見たことがない。作り方を知りたくて「宙吹ガラス工房 虹」を訪ねた。宙吹き法で形作った高温のガラスを、熱いまま土を溶かした液体につけ込む。取り出した後、乾いた透明なガラスの表面には、張り付くように土がまぶされていた。
ガラス職人として50年。米兵や観光客向け沖縄土産という印象が強かった琉球ガラスを、芸術的工芸品として高めた。「泡ガラス」の第一人者はなお、新たな作品を生み出し続けている。