東京23区内で最大の耕地面積を持つ練馬・大泉地区。ここで「練馬野菜カレー」と名付けたレトルトカレーが売られている。地元農家12人がブロッコリーやジャガイモ、ニンジンなど自慢の野菜を持ち寄って製品化した、1万7000食の限定商品だ。売りは「ココロとカラダにやさしいカレー」、外箱には野菜を手にした生産者の顔を並べた。昨年4月の発売以降、売れ行きは好調で、この春に第2弾を作った。
発案者は流通会社・大治(東京都大田区)。見た目が不格好だったり、とれすぎて売れ残ったりした野菜が捨てられていく様子を見て、加工品にするアイデアが生まれた。
農家12人のうちの1人、加藤晴久さんは朝にとった野菜をほぼ毎日、近所のスーパーなどに卸している。「食べごろの野菜だけをその日に収穫する」ため、一定の量を毎日確実に求める大型店はそぐわない。野菜畑には週に数回、大治の担当者が訪れる。農作物の生育状況を確認して翌週の収穫の目安をたてるが、それでも急に悪天候になれば、収穫物が全くない日もある。
以前は市場に卸していたこともあった。しかし、流通コストを抑える目的で、ダイコンの大きさが段階で分けられたり、ホウレンソウが一定の長さで切りそろえられたりする「規格」に抵抗を感じた。「野菜が最もおいしい時期は、作っている人間が一番よく知っている」と加藤さん。「朝にとった野菜はその日のうちに食べてほしい」。それが手塩にかけて育てた生産者の共通した願いだ。
そんな生産者の気持ちを届けようと、産地から直接、野菜を仕入れる店舗が増えている。飯田橋駅に直結するスーパー「三浦屋」では、「一番近い産地」とうたい、大泉の野菜を扱っている。ときには、生産者らが店舗に出向き、野菜の宣伝をする姿も見られる。
野菜は、収穫後も呼吸をしている「生き物」だ。加藤さんは「多くの人は、野菜がもつ本来の味を知らない」と言う。同じ野菜でも、土や天候、栽培環境によって異なる味を楽しむことだってできる。
野菜ソムリエの馬場梢さんは「形がゆがんでいても、見慣れない粉やキズがあっても、説明を受ければ生活者は安心できる」と指摘する。ひと昔前なら八百屋に行けば店主が選び方や食べ方を教えてくれた。それを聞いて献立を考えるのが、日常の光景だった。生産者と消費者を結びつける機能が自然に働いていた。
生産者の願い、流通の努力、販売店の工夫、そして野菜を楽しむ消費者の心。すべてが上手に合わされば、野菜はもっとおいしくなる。