「楽しくてしようがない」。料理研究家・脇雅世さんの視線の先には、たくさんの保存食の瓶。料理教室で教える合間にも、毎年5月の終わりには青梅を使った梅酒や梅干し、ジャム、シロップなどを自宅用に作る。これが暮らしに季節の風を吹き込んでくれる。
脇さんの頭の中には「保存食カレンダー」がある。梅やイチゴが出回る時期は「わくわく、どきどき」。旬の食材は栄養価も高く、保存食にすることで、年中楽しめるのが魅力だ。梅シロップなどはクエン酸が豊富で、夏の疲労回復にはもってこいの飲み物だ。
「梅酒のいいところは、日数がたたないと飲めないこと」と脇さん。季節を問わずになんでも食べられる時代だが、「時間だけが作れる味があるんです」。
1キロの梅があったら、半分を梅酒に、もう半分で梅シロップや梅しょうゆを作るのが、脇さんのおすすめ。大きな瓶がなかったら、小さな器に小分けにしてもいい。食べきれない果物も、果実酒やジャムにして楽しめる。
初心者にはノートを付けることもすすめている。分量などを正確に書いておき、飲んだら感想も書き込む。その繰り返しが「わが家の味」を作るのだという。
脇さんには娘が3人いる。でも特別に料理を教えたりはしない。「おいしい物を知っていれば、作り方を知りたいと思ってくれるはず。旬の食材の大切さも」。数年前から、脇さん自身も母親からたくわん作りを習っている。数々の保存食と同様に、それも「無くしたくない大切な味」だからだ。
居酒屋などで梅酒が豊富に取りそろえられるようになったのは、3年ほど前から。焼酎ブームの延長とも言われるが、口当たりがよく、お酒が苦手な人も楽しめるのが人気の理由でしょう。自宅では作るのが難しい「黒糖梅酒」など素材にこだわったものや、ブランデーベースの高級品「エクセレント」の売れ行きが、以前に比べて伸びてきている。
これまで、台所の隅や押し入れに置き去りになってきた梅酒が表舞台に出るのは喜ばしいこと。しかし、かつては保存食や家庭薬として作られてきた歴史あるお酒として基本を忠実に受け継いでいきたい。
これからの季節はオンザロックがおすすめ。お酒が苦手な人は5対5の水割り、甘さが苦手な人は少量のジンを入れるとドライな味わいになる。100%果汁のオレンジジュース、ジンジャーエールなどとも相性がよく、カクテルにしても楽しめる。