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2006.5.31(水)更新  特集/フロシキ新時代
 
 包むものに合わせて自在に姿を変える風呂敷。先人の気持ちや工夫が詰まっている知恵布だ。その時代に合った使い方や機能、美しさを見いだしながら、風呂敷文化は「いま」と「未来」に受け継がれる。
風呂敷
 室町時代の大名が、蒸し風呂で床に敷いていたことに由来する。衣服を包んだ風呂敷を取り違えないよう家紋が入れられ、湯上がりには体をぬぐい、湯具の持ち運びにも使われた。
素材から建築家とコラボ
美濃部順一郎さん  日本が誇る伝統和小物・風呂敷。四角い布に新たな可能性を求め、東京・日本橋にある風呂敷メーカーの4代目・美濃部順一郎さん(36)=写真=は、「包む」だけではなく「包まれたときの美しさ」を追求している。その着想は、立体のプロともいえる建築家5組にデザインを依頼して形になった。美濃部さんと建築家のプロジェクト「ARCHITEXTURE」(アーキテクスチャー、建築+生地の造語)の「作品」が6月7日、新宿と横浜タカシマヤのリビングフロアに並ぶ。

 「風呂敷をもっと日常的に使ってほしい」「和の世界だけにとどまらない身近な存在にしたい」

 そんな思いは、それぞれの建築家にも伝わった。ある時、1人から凹凸のある生地で染められないか、とたずねられた。常に素材に立ち戻って考える、建築家ならではのこだわりだった。デザインだけにとどまらない積極性に共鳴した美濃部さんは、90×90センチという大きさ以外の条件を一切、無くすことにした。

 提案された生地を見つけることから始め、引き受けてくれる染色工場を探し回った。その結果、それぞれの建築テーマにも通じる機能と美を兼ね備えた風呂敷が完成。古くから伝わる知恵布にまた一つ、素材を見て楽しみ、触って感じる楽しみが加わった。美濃部さんは「従来の工程を最初から見直し、改めて素材について考えるいい機会になった」と振り返っている。

 かつて普段使いの布として親しまれてきた風呂敷。いま求めようと思ったら、通常はデパートの呉服売り場だ。若い人たちにとってはちょっと敷居が高いかも知れない。

 「風呂敷は『ふろしき』でも『フロシキ』でもいい」。呉服売り場だけでなく、いろんな場所で扱い、目にしてもらいたい。スカーフのようにまとったり、テーブルセンターのように飾ったり、もちろん、しゃれたワイン包みなどにも。リビングフロアでの販売はその第一歩だ。

 「次は女子高生に使ってもらえるような風呂敷を考えたいな」。新しい和の創造で、現代の暮らしに可能性を広げたいと思う。そこには大きな夢が包み込まれている。

 3月に「hhstyle.com原宿本店」で開かれた「ARCHITEXTURE」の展示販売の様子。左から(1)内藤廣の作品。安曇野ちひろ美術館(長野県)など伝統と最先端を融合させる建築と同様、凹凸がある日本特有の生地「楊柳(ようりゅう)」を斬新なデザインに染め上げた(2)妹島和世。金沢21世紀美術館(石川県)やDior表参道でみせた女性らしい優美さを再現。風呂敷にあしらった大きな花柄は、包み上げると幾何学模様に見える(3)手塚貴晴・由比夫妻。表と裏をそれぞれのスタンドカラー青と赤で(4)青木淳。銀座や表参道のルイ・ヴィトンの外観に使った「モアレ」(素材の重なりで生じる斑紋)を表現できる素材を使用(5)隈研吾。黒は自身が好きな色。各5250円。

 建築家 隈研吾さん「手触り感を重視」  

 来春、東京・六本木に開館するサントリー美術館を手がけている隈研吾さん=写真上。デザインした風呂敷は黒の生地に点字を配した。包み、結び、持つ際の手触り感を重視したという「作品」について聞いた。
 包むとき、開くときの肌触りは風呂敷が持つ大きなメッセージ。生地はやや厚めでも、柔らかく手になじむ素材を選びました。そこに点字=写真下。最も触覚に訴えることができると考えました。作り方にもこだわり、生地そのものの毛を立たせる特殊加工をしました。素材と一体の感触を出したかったからです。点字のメッセージは「むすんでひらいて」。「結ぶ」にちなんでいます。
 建築家にとって、ものづくりの初めの素材選びは日常的なこと。風呂敷のデザインは、僕の建物のデザイン方法に通じるものがありました。使い手のことを考え、視覚以外に訴えることを重視しているからです。
 建築も風呂敷の制作も、使う人、作る人、デザインする人の共同作業。デザイナーも頑張ります。だから、作る人も頑張って欲しい。使う人には少しだけ頑張ってもらい、作り手の思いを感じとってほしいです。

風呂敷専門店「むす美」
  風呂敷専門店「むす美」
 東京・原宿の店内で月に2日、「ふろしき講習会」を開催。包む・結ぶことで育まれてきた独特の風呂敷文化を、ワインなどのギフトラッピングやバック作りを通して学ぶ。結び方の基本から、楽しい活用法を習得する。定員10人。要予約。問い合わせは03・5414・5678。

FUROSHIKI展
  FUROSHIKI展
 レジ袋削減のため風呂敷を推奨する環境省の呼びかけで、6月6日(火)〜12日(月)まで、日本橋三越本店、銀座店で開かれる。著名人やデザイナーら約30人がデザインした風呂敷(受注販売、5500円)を展示。4月に東京・銀座で催されたときには、お気に入りの帽子や植木など、思い思いの「大切なもの」を包んだ風呂敷が並んだ。ふろしき研究会の森田知都子代表は「布との触れあいを通して、包むものへの愛情や贈る相手への気持ちも包んでほしい」と話している。



(2006年5月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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