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(上)仕上げまでぬかりなく(右が山口政広さん)=東京都墨田区で。
(中)裏面に絵柄を配した「自転車」。
(下)「イタリアの駅」。
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スッ、カチッ。広げると心地よい音と感触が伝わってくる。愛用する人たちから「雨の日が待ち遠しくてしようがない」と言われるモンブランヤマグチの傘。職人たちによる丁寧な手仕事と、雨にぬれると一層色鮮やかになり、絵柄の柔らかみが増す「ほぐし織り」の生地が、その理由だ。
創業者は山口政広さん(72)。高校卒業と同時に傘屋に就職し、25歳で独立した。「本当にいいもの、喜んでもらえるものを届けたい」と目を付けたのがほぐし織りだった。
縦糸で仮織りした反物に多色刷り版画のように型を重ねて染色した後、仮留めの糸をほぐし、横糸を織る。その糸を抜く時、絵柄に微妙なズレが生じ、浮き出る感じの味わいになる。機織りで打ち込まれた生地は、糸と糸がしっかり密着し、絡み合っている。
生地だけでなく、傘が完成するまでには何人もの職人の手が入る。型造り、型染め、機織り、骨組み、生地張り、仕上げ。骨組みでは、天然木の中棒に、はじきとなる針金を埋め込む。生地張りでは、糸にロウを塗って縫い合わせる。こうすることで糸に強さが出て、雨がしみ込みにくくなる。
銀座や浅草などの小売店に売り込み続け、経営が軌道に乗ったのは20年ほど前。百貨店に商品を置いてもらえるようになったのはここ4、5年のことだ。「食べ物でも何でも、質にこだわる人が増えたのでは」。半世紀近く前に抱いた「いいものを届けたい」という夢が、かないつつある。
モンブランヤマグチのロゴは、山と山で「人」の字を形作っている。人の字には、土星のような輪がかかっている。何人もの職人の手を仲介し、使う人の元に届く、その「輪」を表しているのだという。「10年以上前に買った傘を、修理に持ってこられるお客さんがいるんですよ」。山口さんの目がほころんだ。
価格は1万〜1万8000円が中心。絵柄は約80パターン。折りたたみ傘やパラソルも手掛けている。問い合わせは03・3626・4131。