東京都の公衆浴場業生活衛生同業組合によると、都内に残る銭湯は、994軒(5月末調べ)。40年ほど前は2500軒を越えていたが、自家風呂の普及などにより銭湯は減少の一途をたどっている。
衰退を危ぶむ声が高まるなか、組合発行の浴場広報誌「1010(いちまるいちまる)」を14年にわたり手がける黒塚憲之編集長(59)は、「銭湯はスーパー銭湯とは似て非なるもの。銭湯に新しい発想を抱く人が増えてきた」と期待を寄せる。
身近な癒やしの場
墨田区で「さくら湯」を経営する星野剛さん(71)は、フロントから見た日々の光景をつづった日記を、組合のサイト(http://www.1010.or.jp)で公開中だ。下町人情あふれるこぼれ話が満載だが、本音は「もう少し客同士の会話がほしいな」。戦後、15歳で始めた下足番から今日まで、銭湯の栄枯盛衰を見てきた。「ひと昔前は自家風呂代行業だったが、今は身近な癒やしの場、美容健康工房かな」
杉並区の「玉の湯」3代目、萩中芳晴さん(43)は、設備の老朽化に伴い、「祖父が作ったものを取り壊すのはもったいない」と、宮造りの銭湯を当時の面影が残るように修繕した。自家風呂が当たり前の時代でも客はやってくる。「銭湯には、今も昔も変わらない何かがあるんだ」
NPO立ち上げも
NPOを立ち上げた銭湯もある。杉並区の実験浴場こと「なみのゆ」だ。ロビーにはインターネットにつないだパソコンが2台。初心者向けのパソコン教室も開く。洗い場には、長さ5メートルの歩行プール。経営者の大小島博さん(57)が、スポーツ施設で体験したリハビリにヒントを得て4年前に作った。定期的に水中でのストレッチ体操教室を開いている。「健康」をキーワードに、めざすは「100年後に残る銭湯」。お年寄りや赤ちゃんの入浴サービスを思案中だ。
◆都内は全面禁煙に
燃料費の上昇などにより、6月から東京都内の入浴料が430円、6〜11歳180円、5歳以下80円に。都浴場組合は、都内の公衆浴場施設内の全面禁煙を決めた。