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2006.6.21(水)更新  特集/銭湯「あぁ極楽」
 
 のれんをくぐれば広がる異空間。銭湯は身近な「極楽浄土」。
 心と体をほぐしに、ひとっ風呂浴びに行きませんか?
 「番台」の思いさまざま

 東京都の公衆浴場業生活衛生同業組合によると、都内に残る銭湯は、994軒(5月末調べ)。40年ほど前は2500軒を越えていたが、自家風呂の普及などにより銭湯は減少の一途をたどっている。

 衰退を危ぶむ声が高まるなか、組合発行の浴場広報誌「1010(いちまるいちまる)」を14年にわたり手がける黒塚憲之編集長(59)は、「銭湯はスーパー銭湯とは似て非なるもの。銭湯に新しい発想を抱く人が増えてきた」と期待を寄せる。

 身近な癒やしの場

 墨田区で「さくら湯」を経営する星野剛さん(71)は、フロントから見た日々の光景をつづった日記を、組合のサイト(http://www.1010.or.jp)で公開中だ。下町人情あふれるこぼれ話が満載だが、本音は「もう少し客同士の会話がほしいな」。戦後、15歳で始めた下足番から今日まで、銭湯の栄枯盛衰を見てきた。「ひと昔前は自家風呂代行業だったが、今は身近な癒やしの場、美容健康工房かな」

 杉並区の「玉の湯」3代目、萩中芳晴さん(43)は、設備の老朽化に伴い、「祖父が作ったものを取り壊すのはもったいない」と、宮造りの銭湯を当時の面影が残るように修繕した。自家風呂が当たり前の時代でも客はやってくる。「銭湯には、今も昔も変わらない何かがあるんだ」

 NPO立ち上げも

 NPOを立ち上げた銭湯もある。杉並区の実験浴場こと「なみのゆ」だ。ロビーにはインターネットにつないだパソコンが2台。初心者向けのパソコン教室も開く。洗い場には、長さ5メートルの歩行プール。経営者の大小島博さん(57)が、スポーツ施設で体験したリハビリにヒントを得て4年前に作った。定期的に水中でのストレッチ体操教室を開いている。「健康」をキーワードに、めざすは「100年後に残る銭湯」。お年寄りや赤ちゃんの入浴サービスを思案中だ。


 ◆都内は全面禁煙に
 燃料費の上昇などにより、6月から東京都内の入浴料が430円、6〜11歳180円、5歳以下80円に。都浴場組合は、都内の公衆浴場施設内の全面禁煙を決めた。
東京の銭湯はおもしろい 銭湯研究家
町田忍さん
町田忍さん  28年間にわたって北海道から沖縄県まで2600軒以上の銭湯を訪ね歩いたが、東京ほど視覚的な遊びが発達している地域はない。社寺風の建築様式、ペンキ絵の背景画、脱衣場の格天井、洗い場のモザイク画や九谷焼のタイル絵、立派な庭。

 銭湯が豪華な造りで非日常的な空間を演出しているのは、よりリラックスさせる効果をねらったもの。富士山の背景画を眺めながら湯につかれば露天風呂にいるような気分になる。

 最近は銭湯ツアーに若い女性が参加するようになった。昭和レトロブームの流れもあるが、伝統的な銭湯に残る「いいもの」が分かるようになったようだ。見る目が肥えてきたんだね。

 大人と子どもが年齢差なく裸で集う銭湯は、世界に誇れる日本の文化。人とのふれあいが必要とされるこのご時世における「最後のとりで」ではないか。若い世代にはなじみが薄いが、銭湯は奥が深く、魅力的な知的対象が詰まっている。のれんをくぐれば新しい世界が広がるはずだ。   (談)


銭湯の仕組みを知る

 7月23日(日)〜11月26日(日)、東京都杉並区大宮1丁目の区立郷土博物館(永福町駅からバス、TEL03・3317・0841)で、特別展「杉並のお風呂屋さん」を開催。区内の銭湯とその舞台裏を写真や展示物とともに紹介する。実際に使われていた番台を移設して再現した脱衣場も。落語会や講演会なども。8月6日(日)午後2時、町田さんによる講演「今、銭湯がおもしろい!」。
 観覧料100円。開館時間は、午前9時〜午後5時(入館は4時半まで)。(月)、第3(木)((祝)の場合は翌日)休み。
 
手ぶらでひとっ風呂
 多くの銭湯は、入浴時に必要なタオルやせっけんなどを販売しているので、気軽に立ち寄ってみよう。

さくら湯  ◆ さくら湯
 七つの湯を楽しめる。墨田区業平4丁目(押上駅、TEL03・3623・6917)=写真上。午後3時半〜午前0時。5、15、25日休み((日)(祝)(金)は変更)。

 ◆ なみのゆ
 アルカリ性の井戸水を使用。(日)は午前8時から朝湯。杉並区高円寺北3丁目(高円寺駅、TEL03・3337・1861)。午後3時((水)は午後6時)〜翌午前1時半。(土)休み。

 ◆ 大黒湯
 1929(昭和4)年開業。東京型銭湯の代表格。足立区千住寿町(北千住駅、TEL03・3881・3001)。午後3時〜午前0時。(月)休み。

明神湯  ◆ 明神湯
 日替わりで薬湯。大田区南雪谷5丁目(雪が谷大塚駅、TEL03・3729・2526)=同下。午後4時〜11時半。5、15、25日休み((祝)は翌日)。

 ◆ 玉の湯
 1948(昭和23)年開業。杉並区西荻北3丁目(西荻窪駅、TEL03・3399・2966)。午後3時半〜午前0時半。(木)休み。

 ◆ 燕(つばめ)湯
朝湯が人気。台東区上野3丁目(御徒町駅、TEL03・3831・7305)。午前6時〜午後8時。(月)休み。

(2006年6月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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