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アートリップ

THE HEART OF TREES 
ジャウマ・プレンサ作(新潟市)

成長し続ける「魂の木」

2009年2月、プレンサ氏は下見で現地を訪れた。新潟の自然に感銘を受けたという
2009年2月、プレンサ氏は下見で現地を訪れた。新潟の自然に感銘を受けたという
2009年2月、プレンサ氏は下見で現地を訪れた。新潟の自然に感銘を受けたという 信濃川分水路脇の関分記念公園にある中国人作家、管懐賓(グァン・ファイビン)の作品「心園の渡り」

 シロツメクサが一面に広がる信濃川河川敷。大河を見守るように座る、2体の像がある。Schubert、Beethoven……。高さ約1メートルのブロンズ像の全身は、世界的な音楽家たちの名前で覆われている。

 作家はスペイン人美術家のジャウマ・プレンサ(1955~)。新潟市を舞台に2009年から3年ごとに開催されてきた「水と土の芸術祭」の第1回出展作として、緑地堤防「やすらぎ堤」に設置された。

 目を閉じ、スダジイの木を包むようにひざを抱く姿は、自己に向き合う作家の自画像。イギリスやスウェーデンの彫刻公園に設置されたシリーズ作品の一つだ。「抱かれる木は、成長し続ける魂の隠喩。文化の象徴である文字で、愛する音楽を可視化した」とプレンサ氏。像の背後には国内外のオーケストラが演奏を行う市民芸術文化会館。芸術祭の事務局を務める市職員の長谷部原(げん)さん(46)は「音楽などの芸術文化が集まる空気を作家が感じ取ってくれた」と話す。

 一方の木が乾燥で枯れ、植え替えるなどのトラブルもあったが、2体の像は今や河畔の風景の一部だ。毎日散歩で訪れるという堺郁夫さん(80)は「何か考えている姿がいいね。毎日見ても見飽きない」と目を細める。

 「大きく太く成長する木と共に、この土地の文化の輪も広がってほしい」と長谷部さんは願いを込める。

(安達麻里子、写真も)

 信濃川

 長野県、新潟県を流れ、日本海に注ぐ全長367キロ、日本最長の川。新潟市がある越後平野は、信濃川と阿賀野川(同210キロ)の二つの大河が運んだ土砂で形成された。2009年から、「水と土」をテーマにした芸術祭を開催しており、現在も市内で10作品が公開されている。

 《作品へのアクセス》 新潟駅から車で10分


ぶらり発見

新潟花街茶屋

 江戸期に北前船の寄港地としてにぎわった新潟。古町は日本三大芸妓(げいぎ)の街の一つと称され、活況を呈した。新潟駅からバスで約10分の国指定名勝・旧齋藤家別邸で、毎月2、3回、(土)に、古町芸妓の文化に親しめる新潟花街茶屋(事務局TEL025・223・8181)を開催している=写真。お座敷遊びの体験や舞の鑑賞など、約45分で3000円(抹茶と菓子付き)。

 新潟の郷土料理といえば、わっぱ飯。古町通9番町にある田舎家(TEL223・1266)は発祥の店で、サケのわっぱ飯(756円)などが味わえる。午前11時半~午後2時、5時~10時半((日)(祝)は10時まで)。

(2016年7月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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