読んでたのしい、当たってうれしい。

オトコの別腹

堀江敏幸さん
「成城あんや」のかのこ餅

「成城あんや」のかのこ餅
「成城あんや」のかのこ餅
「成城あんや」のかのこ餅 堀江敏幸さん

 楽しく会話をしながらとか、仕事が一段落した後とか、食べている時の雰囲気や状況、体調など全部が合わさって「味」になると思うんです。10年ほど前に初めて食べた時、それが僕にとって「ちょうどいい味」だったから、より印象深く記憶に残ったのかもしれません。

 まず、餡(あん)がとてもおいしい。小豆の粒が混ざったやわらかい餡の甘み、多すぎず少なすぎない量もバランスがいい。

 それから食べやすいサイズ。直径約6センチと手のひらに載るくらいの大きさで、もちっとした生地は、ぽろぽろこぼれないから、片手に持って仕事をしながら食べられるのもいいですね。ご飯の前でも1個だったら許されるかな。本当なら5個はいけると思いますが……。

 昔から和菓子にもコーヒーなんです。深煎りのコーヒーをいれて、おいしい和菓子をいただく、それが僕にとっては大変贅沢(ぜいたく)な時間です。

 

◆東京都世田谷区成城6の5の27(TEL03・3483・5537)。
 140円。
 店内の茶房でも注文可。
 午前9時~午後8時。(茶房は7時10分ラストオーダー)


 ほりえ・としゆき 作家。
 著書に2001年芥川賞受賞作「熊の敷石」など。「その姿の消し方」(新潮社)が発売中。

(2016年3月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

オトコの別腹の新着記事

新着コラム