五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
上からのぞくと、黄褐色の皿が見える。拾ってきた古瀬戸の欠けた小皿に、自邸があった津市の千歳山の土を使って上部を継ぎ足した本作。収められた曲げわっぱのふたの裏には、「人みな珍盌(わん)ちんわんといふ」と記されている。銘の「ねこなんちゅ」は、「わん」を犬にかけて猫に見せたら何と言うかな、という意味。半泥子(はんでいし)のユーモアがあふれる。
半泥子が本格的に陶芸を始めたのは55歳ごろ。北大路魯山人(ろさんじん)とともに「東の魯山人、西の半泥子」と称された。「魯山人が料理を究めるために陶芸の道に入ったのと同じで、半泥子は茶道を究めるためだった」と主任学芸員の龍泉寺由佳さん。あくまで趣味。自分の思うままに作陶し、自由に銘を付けた。生涯に手がけた陶芸作品は3万とも5万とも言われ、その大半が茶碗だ。