五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
何とも変わった自画像だ。仮面の群集に囲まれ、こちらを見つめるヒゲの男。本来は表情を隠すはずの仮面に、人間が内面に隠しもつ邪悪さが見て取れ、異様な感じを与える。本展のテーマである「花」は、男の赤い帽子の飾りなどで登場する。
作者のジェームズ・アンソール(1860~1949)は、近代ベルギーを代表する画家だ。20代初めに前衛芸術家団体「二十人会」の創設に参加。仮面や骸骨を好んで描いたが、彼の作品は世間からも仲間からも理解されなかった。本作の仮面の集団は自分を理解しない人たちと考えられている。「花で飾ることで自分を鼓舞しようとしたのでは」とメナード美術館副館長の村上久美さん。
ようやく名声を得たのは20世紀に入ってからだった。