五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
宮脇綾子(1905~95)は67年から69年まで毎日色紙に日記をしたためた。本展ではそのうちの32点が並ぶ。
67年12月2日付けの本作は、干し柿の作品を制作した日に書いた。「柄を合せてへたを三角に切る」など作り方を詳細に記しており、几帳面(きちょうめん)な人柄であったことがうかがえる。
制作で余った布を、1センチに満たないものまできれいに組み合わせて貼っているのが印象深い。彼女は画家の宮脇晴と結婚して義母からものを大切にする心を学び、作品作りにも生かしたそうだ。
そのほか、松坂屋名古屋店の藤田嗣治展を見に行ったエピソードや、カラーテレビを初めて購入した話など、27年に嫁いで、終生名古屋で過ごした彼女の暮らしぶりを垣間見ることができる。