五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
レイモン・サヴィニャック(1907~2002)が、仏のウット毛糸から依頼されたのは、ブランドのキャッチフレーズを広告ポスターにすること。
毛糸の女の子が自分で自分を編むユニークな本作。仏語で書かれたキャッチフレーズ「この毛糸はとても編みやすい」は、「ひとりでに編める毛糸」と読み換えることもできる。彼はそれを文字通りに捉えて絵にしたのだ。「作品は当初、足に向かって編む構図だったのですが、上昇感を与えるため、今のような形に。サヴィニャックは他の人が見てどう伝わるかを一番大事にしていました」と学芸員の貴家(さすが)映子さん。
宣伝する製品を人物と一体化させたり、製品自体を擬人化したり。いずれも製品とともにある幸福感を表現している。