読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

犬飼現八信道 犬塚信乃戌孝

高浜市やきものの里かわら美術館・図書館「浮世絵師の見た甍(いらか)」

歌川国芳 制作年代不詳 36.2×49.8㌢
高浜市やきものの里かわら美術館・図書館蔵

 江戸時代にベストセラーとなった、曲亭馬琴の長編小説「南総里見八犬伝」の一場面を描いた本作。策略にはまって追われた犬塚信乃と捕物名人の犬飼現八が、互いに同志と知らず戦う場面は、歌舞伎でも見せ場の一つだ。


 舞台は芳流閣と呼ばれる架空の建物の屋根の上で、虎や竜、朱雀の飾り瓦が描かれる。「実際の飾り瓦にはあまりないカラフルな彩色。豪華絢爛な建物を表現したのだろう」と、主任学芸員の井上あゆこさん。


 一方で丸瓦のみが並ぶ屋根の描写に違和感があるという。「平瓦がないのは不自然で、イメージを先行させて描いたようだ」


 武者絵の名手である作者の歌川国芳(1797~1861)は、芳流閣の対決場面を繰り返し手がけた。今展では、国芳の3点とともに弟子の月岡芳年が同場面を描いた縦長の1点も並ぶ。

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム