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ひとえきがたり

能登鹿島駅(石川県、のと鉄道七尾線)

今年も満開やったわいね

桜のトンネルのようになった「能登さくら駅」に近づく列車をカメラを手にした人たちが待ち構えた=4月12日、石川県穴水町曽福
桜のトンネルのようになった「能登さくら駅」に近づく列車をカメラを手にした人たちが待ち構えた=4月12日、石川県穴水町曽福
桜のトンネルのようになった「能登さくら駅」に近づく列車をカメラを手にした人たちが待ち構えた=4月12日、石川県穴水町曽福 地図

 右手に紺碧(こんぺき)の七尾湾北湾を望み、能登半島の湾曲部を北上した。車窓に桜並木が飛び込んでくる。4月11日朝、駅に降り立つと、約100本のソメイヨシノがホームの両脇から枝を伸ばしていた。

 ふだんは静かな無人駅の愛称は「能登さくら駅」。桜のトンネルで知られ、毎年4月中~下旬には北陸内外から花見客が訪れる。今年は平年より1週間ほど早く満開になった。

 ソメイヨシノは1932年、旧国鉄七尾線開通の記念に周辺住民が植樹した。88年に新駅舎が完成し、地域のシンボルを守るため、住民は91年に「能登鹿島駅さくら保存会」を結成した。

 ところが2007年、駅のある穴水町は能登半島地震で震度6強の揺れを記録し、桜は二分咲きで散った。根が傷んだと見て「このままでは枯れてしまう」と危機感を募らせた会長の堂前勇次郎さん(73)は、のと鉄道や石川県の協力を得て樹木医を招き、アドバイスを受けた。弱った枝の剪定(せんてい)や肥料を与えて世話をすると、翌年以降、満開の桜が戻った。

 今春、8年ぶりに桜を診た県農林総合研究センター林業試験場の樹木医、千木容(せんぎよう)さん(58)は「住民の手入れのおかげで元気です」。お墨付きを得て、堂前さんは保存会が主催する祭りの準備に励んだ。「北陸新幹線開通で関東からの客も見込めるわいね」。19日、花びらが舞い散る中で行われた祭りは約2500人の人出を見せた。

文 岡山朋代撮影 横関一浩 

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 のと鉄道七尾線は、七尾駅(石川県七尾市)と穴水駅(穴水町)を結ぶ33.1キロ。

 29日(水・祝)から観光列車、のと里山里海号を運行。(土)(日)(祝)(休)限定の「ゆったりコース」は徐行運転や一時停車を繰り返し、約70分(通常は40分ほど)で沿線をめぐる。アテンダントによる案内も。1500円。問い合わせはのと鉄道(0768・52・2300)。

 七尾駅から徒歩10分の高沢ろうそく(TEL0767・53・0406)は創業123年。植物性の原料を使った伝統の「和ろうそく ななお」(5本入り、1944円)が売れ筋。

 

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歌の直行便

 穴水町出身の歌手、三輪一雄さんが能登鹿島駅をテーマにした曲を歌っている。1990年、32歳で発表した「能登さくら駅」はデビュー曲。「桜の幹に二人で書いた相愛傘」など実体験を盛り込んだ。アルバム「歌の直行便」=写真=に収録。

(2015年4月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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