アートリップ

風の渓谷 
千住博作(東京都大田区、羽田空港)

吹き抜ける風 感じて

独特の深い青は「千住ブルー」と呼ばれる=篠塚ようこ撮影

独特の深い青は「千住ブルー」と呼ばれる=篠塚ようこ撮影

  • 独特の深い青は「千住ブルー」と呼ばれる=篠塚ようこ撮影
  • 展望デッキ前の「MOOON」は千住さんには珍しい立体作品。三日月形の角と牛の鳴き声をかけて命名した=篠塚ようこ撮影

 羽田空港、第2旅客ターミナルの出発ロビー。キャリーバッグを手に足早に行き交う人々を、天井からつるされた絵が見下ろす。手がけたのはニューヨーク在住の日本画家、千住博さん(59)。空港ターミナルのアートディレクターを務める。

 「空港は、緊張感のある人工的な空間。僕はそこに風を生みだしたかった」。2010年、ビルの拡張に合わせて制作した。設置場所は、1階から5階までを貫く吹き抜け部分。その広い空間を、千住さんは巨大な谷に見立てた。

 ラピスラズリを砕いた青で、谷間に吹く風を描き、その絵をファブリック製のパネル11枚に拡大印刷した。パネルはそれぞれ縦6×幅1.7メートル。分割して掛け軸のようにつり下げたのは、風の揺らぎを表現するためだ。「風が完全にやんだ状態というのは、とても非人間的。風を感じることは、生命にとって救いにつながると思うんです」

 「アートは自然と人間をつなぐもの」が持論だ。滝や湖などをモチーフに、公共アートを多く手がけるが、過度な自己主張はせず、空間に溶け込むような作品を心がける。着彩も自然に存在するような色合いにした。

 搭乗前に、ソファでくつろいでいた都内在住の坂野知恵さん(56)が作品を見上げた。「山の中に来たみたい。なんだか深呼吸したくなりますね」

(中村茉莉花)

 第2旅客ターミナル

 2004年12月にオープン。設計は米国の建築家、シーザー・ペリ。敷地内には、他にも四つの千住作品が設置されている。吹き抜け部分の作品は、退色のため数年おきに新しいものに取りかえ、「風の渓谷」は3代目。作品があるショップ・レストラン街には、千住さんの弟で作曲家の明さんが作曲し、妹でバイオリニストの真理子さんが演奏したBGMが流れる。

 《作品へのアクセス》京急線羽田空港国内線ターミナル駅から徒歩5分。


ぶらり発見

金子みすゞ記念館

 旅の土産にぴったりなのが、羽田空港限定のどら焼き「羽雲(はねぐも)」(写真、5個入り1080円~)。和菓子屋「叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)」とのコラボ商品で、北海道産小豆のつぶあんを柔らかな生地が包む。第2旅客ターミナル2階東京食賓館ほか、空港内各所で販売。

 第1旅客ターミナル1階には、1963年建立の羽田航空神社が。本宮は新橋の航空神社。搭乗前に旅の安全を祈願する人も。

(2017年4月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

広告
「アートリップ」の新着記事 一覧を見る
直島パヴィリオン 藤本壮介作(香川県直島町)

直島パヴィリオン 
藤本壮介作(香川県直島町)

「本船はまもなく、宮浦港に入港いたします」。船内アナウンスに顔を上げた。

WEB FRAME 渡辺誠作(東京都文京区、飯田橋駅)

WEB FRAME 
渡辺誠作(東京都文京区、飯田橋駅)

地下空間の頭上に、鮮やかな緑の「網」が広がった。都営地下鉄大江戸線の飯田橋駅。

杜(もり)のうた ジョージ・ツタカワ作(仙台市宮城野区)

杜(もり)のうた 
ジョージ・ツタカワ作(仙台市宮城野区)

「ジョージ・ツタカワ」。仙台市・榴岡(つつじがおか)公園で噴水彫刻を撮影していた男女の言葉に、思わず振り返った。

Mother 風の門 原田ミドー作(北海道江別市)

Mother 風の門 
原田ミドー作(北海道江別市)

春の匂いを含んだ風がれんがの門を通り抜けていく。江別市セラミックアートセンターの裏庭に「Mother 風の門」は立つ。

新着コラム 一覧を見る
「京うどん 葵(あおい)」の葵うどん

おんなのイケ麺(めん)

杉本彩さん
「京うどん 葵(あおい)」の葵うどん

出会ったのは15年以上前でしょうか。以前は東京都世田谷区に住んでいて、行動範囲だったんですね。別の区に引っ越して、京都と東京を行き来する生活になった今でも足を運ぶぐらい大好きなお店です。

「チョコレートショップ」の博多の石畳

オトコの別腹

小久保裕紀さん
「チョコレートショップ」の博多の石畳

20年くらい前かな。僕の誕生日に、知人がこのケーキにデコレーションを施してプレゼントしてくれたんです。

バルビゾン派【上】 山梨県立美術館

目利きのイチオシコレクション

バルビゾン派【上】 山梨県立美術館

パリから南東へ約60キロメートルの、風光明媚(めいび)なフォンテーヌブローの森。1820年代から19世紀半ば、森に近いバルビゾン村に滞在・移住して、自然や農村を描いた画家たちがいました。

「ハレドール」

美博ノート

「ハレドール」

白い地に輝く金彩や細やかな絵柄、美しいフォルムが特徴の、ナカヤマの洋食器。14年前に本格的な生産を終えたため、「幻のナカヤマ」とも呼ばれる。

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。

お知らせ(更新情報)
6月1日からはがき代が52円から62円に、往復はがき代が104円から124円になりますのでご注意下さい。