アートリップ

wallalley 
眞壁陸二作(高松市男木町)

島にとけ込む 路地壁画

神社へ向かう石段から振り返ると、眼下には瀬戸内の穏やかな海が広がる=楠本涼撮影

神社へ向かう石段から振り返ると、眼下には瀬戸内の穏やかな海が広がる=楠本涼撮影

  • 神社へ向かう石段から振り返ると、眼下には瀬戸内の穏やかな海が広がる=楠本涼撮影
  • 海岸にある、山口啓介作「歩く方舟(はこぶね)」=楠本涼撮影

 フェリーから男木(おぎ)港に降り立つと、船客を待っていたかのように一匹の猫が足元にすり寄ってきた。誘われるまま島内を進んでいくと、迷路のような路地に鮮やかな外壁の家が現れた。

 2010年の瀬戸内国際芸術祭の出品作「wallalley」は、壁と路地を合わせた造語で、作者は現代美術家の眞壁陸二さん(46)。杉板に絵の具などで島の風景や自然を描き、作品を置きたい場所の民家一軒一軒に承諾をもらって外壁に打ち付けた。島の記憶を未来へつなぎたいと、材料の一部に島の廃材を使った。現存する出品作は、島内に計7カ所ある。さらに、眞壁さんが滞在中お世話になった民宿「さくら」の壁にも「お礼」の作品が残る。

 高台に立つ神社の近くには、石段から望む夕日や海面のきらめきを金銀箔(はく)を使って表現したり、郵便局のある通りには、ブドウや梅の木を描いたり。それぞれの場所から見た景色に合う色や絵柄を工夫した。「その土地に根を張り、生えているような作品にしたかった」と眞壁さんは言う。

 自然やアートにひかれ、島外から訪れる人も多い。一年前から島で畑作業を始めたというフランス人の男性が、壁画の場所まで案内してくれた。「自然とアートが共存して面白いよね」と、息が上がるほどの坂道を、長い足でさっそうと上っていった。

(根津香菜子)

 男木島

 人口150人弱。2010年から始まった瀬戸内国際芸術祭をきっかけに若い世代の移住者が徐々に増え、閉校していた男木小・中学校が14年に再開。古民家を改装した私設図書館が開館し、活気づいている。現在は、男木交流館全体を作品にしたジャウメ・プレンサの「男木島の魂」や、小・中学校体育館の正面に描かれたレジーナ・シルベイラの「青空を夢見て」など、4作品が鑑賞できる。

 《アクセス》香川・高松港からフェリーで40分。


ぶらり発見

ビストロ伊織

 男木港から徒歩5分のビストロ伊織(TEL080・9832・2931)では、島で採れた野菜や瀬戸内海の海鮮を使ったフレンチが味わえる。ランチメニューは月替わりで、プレート(写真、デザート付き、1500円)のほか、コースも。午前11時~午後3時ラストオーダー(要予約)。(木)休み。

 島の北端にある男木島灯台周辺では、毎年2月ごろになるとスイセンが見頃を迎える。2004年から地元有志が球根を植え始め、今では約1100万株の花が咲く。問い合わせは男木出張所(087・873・0001)。

(2017年12月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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