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アートリップ

一石を投じる 
島袋(しまぶく)道浩作(札幌市中央区)

アートの定義を問う巨石

作品は資料館の前庭にある。夜間は建物がライトアップされる=野口隆史撮影
作品は資料館の前庭にある。夜間は建物がライトアップされる=野口隆史撮影
作品は資料館の前庭にある。夜間は建物がライトアップされる=野口隆史撮影 道庁赤レンガ庁舎前の広場にあった2014年当時=札幌国際芸術祭事務局提供、木奥恵三撮影

 新緑の大通公園を通り抜けた先、札幌市資料館前にそびえる巨石が現れた。高さ約2・5メートル。自然石だが、れっきとしたアート作品だ。かつては北海道庁の前に置かれ、様々な意見が飛び交うなど、「波紋」を呼んだ。

 本作は、2014年の第1回札幌国際芸術祭の出品作。「都市と自然」のテーマにちなみ、「札幌市の直線的な街並みと自然物を対比させたかった」と作者でアーティストの島袋道浩さん(49)は語る。アイヌの聖地とされる二風谷(にぶたに)から10トン超の自然石「幸太郎石」を運び、手を加えずに道庁前に設置した。

 突然現れた巨石は注目の的に。「これがアートなのか」と戸惑う声が出つつ、継続展示の要望が出るほどの人気を博す。だが安全面などの理由で道庁前の設置は続けられず、札幌市資料館の前庭に仮置きすることになった。同館は、3年に一度開催される芸術祭の拠点だ。

 芸術祭実行委員会は、市民らが本作のゆくえやパブリックアートの在り方を考える場を設けてきた。「アートの定義に、文字通り一石を投じてくれた」と2014年の芸術祭でチーフプロジェクトマネジャーを務めた小田井真美さん(52)。作品を見上げ、「今は休憩中かな。いずれ最適な場所に出会えれば」。

 初夏の午後。巨石は庭の緑に囲まれ、穏やかな時を過ごしているように見えた。再び目覚めるその日まで。

(星亜里紗)

 札幌市資料館

 札幌軟石を使った歴史的建造物。1926(大正15)年に札幌控訴院として建てられた。73(昭和48)年、裁判所の移転に伴い、札幌市資料館として開館。2018年3月に札幌市有形文化財に指定された。ミニギャラリーや研修室のほか、カフェを併設するSIAFラウンジがあり、札幌国際芸術祭の関連資料がそろっている。老朽化のため、2020年の同芸術祭のあとに修復予定。

 《アクセス》西11丁目駅から徒歩5分。


ぶらり発見

元祖つっこ飯

 西11丁目駅の隣の大通駅を中心に、東西南北に地下通路が広がっている。大通駅からバスセンター前駅まで続くのが、札幌大通地下ギャラリー500m美術館だ。コンコースの片側に作品を展示する。6月27日まで「最初にロゴス(言葉)ありき」展を開催。問い合わせは市市民文化局(011・211・2261)。

 地下通路はすすきの駅にも続く。同駅から徒歩1分の海味はちきょう 本店(TEL222・8940)は、「元祖つっこ飯」(写真、中サイズ2490円)が名物。店員が、威勢のいい掛け声でご飯にイクラをたっぷりかけてくれる。

(2018年6月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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