五十三次 京三條橋
江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。
海からぬっと現れた巨大ダコが、舟に足をからめて襲いかかる。三代歌川広重(1842~94)によるこの錦絵は、富山県滑川が舞台。諸国名産品の採取、生産工程を紹介する「大日本物産図会」に収められている。添えられた文章には、吸盤一つで一日の食事が足りると書かれ、その大きさを物語る。
「北陸など寒い地域には、大ダコ伝説が多いんです。その地域で捕れる3メートル近いミズダコの存在が影響しているんでしょう」と縣(あがた)拓也学芸員。
タコの民話や伝承には、人や牛を海に引きずり込む話と、神仏の使いとして、仏像や神宝を抱えた姿で上陸する話が多いとか。「伝説には善悪の二面性があり、タコ自身のように、つかみどころがありません」