読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

渡辺泰幸「土の音」

世界とつながる本当の方法(岐阜県現代陶芸美術館)

 


美博ノート
渡辺泰幸「土の音」

 

 「みて・きいて・かんじる陶芸」との今展サブタイトル通りの作品がある。

 展示室の床に無造作に置かれた陶の球――直径約10~26センチの大小約100個の土鈴だ。鑑賞者はそれらをスティックでたたいたり、振ったり、転がしたりして、「土の音」を楽しめる。

 音を創作のテーマとする美術家・渡辺泰幸が手がけた本作は、20年来続くシリーズのひとつだ。作品に触れて音を楽しむことを通して、人と人、人と作品のコミュニケーションの場を作るのが狙いだという。

 学芸員の山口敦子さんは、作品から出る音を「人間の眠っていた本能を刺激するよう」と表現する。鈍く鳴る低い音、乾いた高い音。鑑賞者それぞれが、作品に触れ、さまざまな音を響かせていた。

(2015年1月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • 五十三次 京三條橋 江戸・日本橋から約500キロ、東海道五十三次の終着点は京の玄関口・三条大橋。東山や八坂の塔を背景に、頭に薪をのせて売り歩く大原女、茶筅をさした竹棒をかつぐ茶筅売り、衣を頭にかぶった被衣姿の高貴な女性が行き交う。

  • 五十三次 府中 日暮れて間もない時分、遊郭の入り口で、ちょうちんを持った女性と馬上の遊客が言葉をかわす。馬の尻にはひもでつるされた馬鈴。「りんりん」とリズム良く響かせながらやってきたのだろうか

  • 五十三次 大磯 女性を乗せ、海沿いの道を進む駕籠(かご)。担ぎ手たちが「ほい、ほい」と掛け声を出して進んだことから「ほい駕籠」とも呼ばれた。

  • 三菱十字号 トヨタ博物館「お蔵出し展」

新着コラム