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私の描くグッとムービー

チダケイコさん(イラストレーター)
「ポーリー」(1998年)

言葉で伝えることの大切さ

 チダケイコさん(イラストレーター)「ポーリー」(1998年)

 

 12年ほど前、レンタルビデオ屋でたまたまオウムのパッケージが目に留まりました。鳥やウサギなどの動物が好きで、当時、小鳥を飼っていたのです。

 人間の言語を理解するオウムのポーリーが、言葉をうまく話せない飼い主の少女マリーに言葉を教えます。鳥としか会話しない娘を心配した両親に引き離されたポーリーが、少女を探す旅の途中で様々な人たちと出会い、ドタバタ劇を繰り広げます。

 自分のことで両親が言い争う声が聞こえる寝室で、マリーがポーリーに帽子と杖を身につけさせて妖精に見立てるシーンが好きです。「自分のことを分かってくれるのはポーリーしかいない」という彼女の悲しい気持ちに胸を打たれます。

 ポーリーをかごから出してくれたミーシャが、かつては気弱な男性だったのに自分の気持ちを相手に伝えられるように変わっていく。私も、結構しゃべるのが苦手なので共感できます。自分の意見を誰かに言葉で伝えることの難しさや大切さを、この映画は教えてくれます。

 野外の酒場でポーリーを含む鳥たちが歌って踊るシーンは、映画ならではの表現でかわいいですね。警戒した時に羽を広げるしぐさなどから、鳥の生態を分かっている人が作っていると思いました。

 私は動物のイラストや漫画を描くとき、リアルさよりも、かわいい部分を強調します。独りで行う作業が多いので、もしポーリーがいたら疲れたときに励ましてほしいな。

聞き手・大野紗弥佳

 

  監督=ジョン・ロバーツ
   製作=米
   出演=ジーナ・ローランズ、トニー・シャルーブ、ハリー・ケイト・アイゼンバーグほか
ちだ・けいこ
 今年10周年を迎えた、幅広い層に人気のキャラクター「カピバラさん」の原案、制作、作画を担当。2011年にフリーに。
(2015年5月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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