私の描くグッとムービー

ヴァンサン・ルフランソワさん(イラストレーター)
「カッコーの巣の上で」(1975年)

マクマーフィが力をくれる

 初めて見た時は19歳。パリの大学で美術を学んでいました。なじみのある娯楽的な映画とはまったく違って、大ショック。思わず震えました。

 刑務所に収監されていたマクマーフィは労役から逃れるため所内で暴力を働き、精神科病院へ送られます。そこでは厳格なラチェッド看護婦長の下、患者たちは無気力な生活を送っていたのです。

 マクマーフィは自分の欲求のままにふるまい、それが患者たちを勇気づけていきます。ある日、彼は「町へ出て野球を見る」と宣言し、給水器で窓を壊して脱出しようと試みます。しかし重くて持ち上げられなかった。その時の言葉が私の心に響きました。「でも努力はしたぜ。チャレンジした」。後悔をしないためには、挑戦してみないといけません。

 俳優それぞれの演技が素晴らしかった。好きな俳優であるジャック・ニコルソンは、すぐにマクマーフィとしか見られなくなりました。登場人物を平等な視点で、丁寧に描いているのも特徴です。患者たちの個性や魅力が伝わってくるので、どんな歴史でここに来ているのか知りたくなるし、映画の場面のように一緒にトランプをしてみたいとすら思いました。

 私の作業場にはマクマーフィのブロマイドが飾ってあります。19歳の時から、何度も彼の生き方に勇気をもらいました。あの映画のように、誰かの心を大きく動かす漫画を描きたい。ずっと目標にしているんです。

聞き手・西村和美

 

  監督=ミロス・フォアマン
  製作=米
  出演=ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャーほか
 1966年仏ルーアン生まれ。福岡在住。バンド・デシネ(仏語圏の漫画)作家として活動する。ウェブサイト http://www.atelierdecale.net

(2017年3月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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