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私の描くグッとムービー

Pantoviscoさん(マルチクリエーター)
「ナポレオン・ダイナマイト(旧邦題「バス男」)」(2004年)

さえない米高校生の日常

Pantoviscoさん(マルチクリエーター)「ナポレオン・ダイナマイト(旧邦題「バス男」)」(2004年)

 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見て以来、アメリカに対する憧れを漠然と抱き続けてきました。高校生が陽気に歌い踊る「ハイスクール・ミュージカル」も好き。日本にはないキラキラした、典型的なアメリカの高校生の世界。

 それと正反対の世界にいるのが、この作品の主人公です。片田舎に住むダサくてオタクな高校生、ナポレオン・ダイナマイト。日々、学校ではいじめられ、家では家族に振り回される。ある日、唯一の友達・ペドロが生徒会長に立候補することになり、選挙活動に協力することに。

 ものすごい大事件や、華やかな大成功があるわけではないんです。大げさでもファンタジーでもない日常生活を描いているところに、僕自身の創作活動に通じるものを感じます。

 登場人物は、ノーマルなアメリカ映画なら脇にいるような、さえない人たちです。かっこ悪いけれど、彼らなりに芯が通っている。その緩さとぶれなさがたまらなくいとおしくて、応援したくなりました。この絵では、ペドロを応援するために踊るナポレオンを客観的に描きました。観衆の表情は「しらけ」とも「のめり込み」とも捉えられる。これは、一度も笑顔を見せない主人公にリンクします。この不気味な空間は、主人公が支配しているんです。

 主人公の表情も物語も、あまり抑揚がない。そんな表現でも、人の心を動かせる。日常を描く僕にとって、目標の作品でもあります。

聞き手・下島智子

 

  監督・共同脚本=ジャレッド・ヘス
  製作=米
  出演=ジョン・ヘダー、ジョン・グリース、アーロン・ルーエルほか
ぱんとびすこ
 インスタグラムのフォロワー32万人。6月8日から東京・池袋のパルコミュージアムで「パントビスコの本当にくだらない個展」を開催。
(2018年5月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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