読んでたのしい、当たってうれしい。

私のイチオシコレクション

家畜標本 インターメディアテク

東大の歴史が蓄積された空間

ウマ骨格標本  空間・展示デザイン(C)UMUT works
ウマ骨格標本  空間・展示デザイン©UMUT works
ウマ骨格標本  空間・展示デザイン(C)UMUT works 土佐尾長鶏(白藤)

 日本郵便株式会社と東京大学総合研究博物館の協働により、2013年に開館しました。1877年の東大開学以来の学術標本や研究資料など、400万点を超える所蔵品の一部を展示しています。森羅万象あらゆるものを網羅した中から、生物を交配して人為的に作った「家畜」の標本を紹介します。

 「ウマ骨格標本」(高さ3・3メートル)は、北海道の輓馬(ばんば)を、館内の専門スタッフが標本にしたもの。農耕や運搬に使うために改良された最大級の馬です。生きている時の躍動感を表現したくて、19世紀に描かれたナポレオンの肖像画の馬をモデルに、上体を起こしたポーズをデザインしました。標本を囲むフレームの縦横比は、黄金比の一種、フィボナッチ数列に基づいています。科学を学ぶ上で、審美的な要素は必要不可欠なんです。

 「尾長鶏」の尾は、長さ2・9メートル。観賞用に尾の長い鶏同士を掛け合わせた日本鶏の剝製(はくせい)です。どちらも自然交配していけば、なくなる「生ける文化遺産」。標本で残す必要性を感じています。

 実は鶏の展示ケースは昭和天皇が所有していました。私は展示ケースも文化財だと思っています。ケースや学術標本の多くが廃棄処分に予定されていたもの。それらを集めて、この展示室を作りました。東大の歴史が蓄積された空間を楽しんでほしいですね。

(聞き手・石井久美子)


 《インターメディアテク》 東京都千代田区丸の内2の7の2。午前11時~午後6時((金)(土)は8時まで。入館は30分前まで)。4月30日を除く(月)((祝)の場合は翌日)休み。問い合わせは03・5777・8600。2点は常設展示している。

西野さん

館長 西野嘉章

 にしの・よしあき 東京大特任教授も兼任。専門は博物館工学と美術史学。現在、「モバイルミュージアム・プロジェクト」を推進。

(2018年4月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

私のイチオシコレクションの新着記事

  • カメイ美術館 当館は仙台市に本社をおく商社カメイの第3代社長を務めた亀井文蔵(1924~2011)が半世紀以上かけて収集したチョウをコレクションの柱の一つとし、約4千種、1万4千匹の標本を展示しています。

  • シルク博物館 幕末以来長く横浜港の主要輸出品だった生糸(絹)をテーマに約7千点を所蔵

  • 平山郁夫美術館 平山郁夫(1930~2009)の「アンコールワットの月」は、好んで用いた群青ほぼ一色でカンボジアの遺跡を描いた作品です。

  • 北海道立北方民族博物館 北海道網走市にある当館は、アイヌ民族を含め北半球の寒帯、亜寒帯気候の地域に暮らす民族の衣食住や生業(なり・わい)に関する資料を約900点展示しています。

新着コラム