読んでたのしい、当たってうれしい。

私のイチオシコレクション

禅画 神勝寺 荘厳堂

難解さと親しみやすさと

白隠慧鶴「眼一つ達磨」 紙本墨画
白隠慧鶴「眼一つ達磨」 紙本墨画
白隠慧鶴「眼一つ達磨」 紙本墨画 白隠慧鶴「お福団子」 紙本墨画

 禅画とは、近世以降の禅僧が水墨画と賛(言葉)で優れた禅的メッセージを表現した書画です。1960年代に禅が世界的ブームとなり、ドイツ人がつけた「ZENGA」という言葉とともに注目されるようになりました。

 中でも、厳格な達磨(だるま)から親しみやすい布袋(ほてい)やお多福(お福)まで様々な表現で、近年関心が高まる臨済宗中興の祖、白隠慧鶴(はくいんえかく)(1685~1768)の禅画約200点を所蔵するのが、1965年開山の神勝寺です。2016年、同寺が「禅的世界」を体験できる場所として境内にオープンした「神勝寺 禅と庭のミュージアム」内の荘厳(しょうごん)堂で展示しています。

 白隠は駿河を拠点にして、民衆に禅の教えを広め、1万点以上といわれる禅画を残しました。まず見てほしいのは「眼(め)一つ達磨」です。太い線で勢いよく描かれた、何とも意表を突く達磨像でしょう。賛には白隠の書で「悟りを開きたければ、我が目で我が目を見よといわれ、そのようにしていたら、今では自分の目も一つになったようだ」とあります。白隠は「自分の目が見えるか」という難解な公案(禅問答)で、見ることのできない大きな存在に気付けと伝えているようです。

 一方「お福団子」は、ユーモラスで分かりやすい「白隠漫画」の一つ。団子を公案に例えて「私の禅を味わってみる勇気がないのか」と問うています。

(聞き手・石井久美子)


 《神勝寺 荘厳堂》 広島県福山市沼隈町上山南91(TEL084・988・1111)。午前10時~午後4時。原則無休。1200円。2点とも常設展示している。同寺内にある現代アート作品「洸庭(こうてい)」の鑑賞や座禅などもできる。

芳澤さん

館長 芳澤勝弘

 よしざわ・かつひろ 禅学・禅宗史を研究。花園大学国際禅学研究所顧問も兼任。著書に「白隠 禅画の世界」など。

(2018年6月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

私のイチオシコレクションの新着記事

  • 立山博物館 江戸時代に立山登拝の拠点村落の一つだった富山県立山町芦峅寺(あしくらじ)集落にある当館は、展示館を中心に施設が点在する広域分散型博物館です。立山の人と自然にかかわる資料約2万点を収蔵し、常設展などで展示しています。

  • 松山市立子規記念博物館 俳句、短歌の革新に取り組み日本の近代文学に多大な影響を及ぼした正岡子規(1867~1902)。生まれ故郷の松山市にある当館は、子規関係の資料をはじめ約7万点の資料を収蔵しています。

  • 世田谷文学館 東京都世田谷区にある当館は、東宝の撮影所が区内にある縁もあって映画に関連する資料も多く所蔵しています。

  • 十和田市現代美術館 街に開かれた美術館がコンセプトの当館は、広い開口部のある展示室が特徴です。

新着コラム