アートリップ

水面への回廊、琵琶湖 
井上武吉作(滋賀県大津市)

港のにぎわい 再び

柱の角度や地面の勾配などを工夫して遠近感を操作している=楠本涼撮影

柱の角度や地面の勾配などを工夫して遠近感を操作している=楠本涼撮影

  • 柱の角度や地面の勾配などを工夫して遠近感を操作している=楠本涼撮影
  • 「石のシンボル彫刻」は子どもたちの滑り台としても活躍=楠本涼撮影

 浜大津駅から琵琶湖の方へ歩いていくと、正面に石柱の列が見えてくる。大津港の公園「シンボル緑地」にある、彫刻家井上武吉(1930~97)の遺作「水面への回廊、琵琶湖」だ。

 花崗岩(かこうがん)の柱やオブジェを配置し、約7700平方メートルの敷地そのものを一つの大きな彫刻ととらえている。湖に向かって、高さ6メートルの列柱を左右に18本ずつ配したアプローチを進むと、「石のシンボル彫刻」を経て砂利敷きの円形広場に出た。中央に一本のクスノキが立ち階段彫刻に囲まれた空間は、古代ギリシャの遺跡のようだ。その先にそびえる高さ10メートルの2本の石柱に導かれて歩くと、ぱっと視界が開け、琵琶湖の水面が広がった。

 古くは豊臣秀吉が大津城を築き、湖上輸送の要衝として栄えた大津港。明治以降は鉄道の開通で観光拠点となり、にぎわうも徐々に衰退。87年からの大規模な埋め立て工事で大型船も入る港に整備され、97年、港のシンボルとして作品が完成した。

 井上は人やものが行き交った「楽市」のような、いにしえの繁栄を作品に託した。「土地の特性を感じ取る作家。作品を起点に人やものが動く、そういう空間を常に意識していたと思います」と長男の井上直也さん(63)。

 湖畔にたたずんでいると、隣の旅客ターミナルから観光船が出発した。一瞬、今と昔の琵琶湖の景色が重なったような気がした。

(石井久美子)

 大津港

 琵琶湖の南に位置する、総面積約7万8500平方メートルの港湾施設。「シンボル緑地」を中心に、大型観光船のミシガンやビアンカなどが発着する「旅客ターミナル」、クルーザーヨットやモーターボートが停泊できる「マリーナ施設」などが整備されている。観光船は、長浜、竹生島などの各港を結ぶ。港に隣接する「浜大津アーカス」2階には、近江の特産品を集めた「湖(うみ)の駅」がある。

 《作品へのアクセス》京阪電鉄浜大津駅から徒歩2分。


ぶらり発見

びわこ花噴水

 シンボル緑地の沖合180メートルの防波堤ではびわこ花噴水が上がる。66本の噴水の連続する長さは約440メートルで世界最大級。夜間は3色の光でライトアップされている。9月までの平日は午後8時~9時、(土)(日)(祝)は正午~午後1時、3時~4時、7時~9時。第2・4水曜、荒天時など休み。

 京阪電鉄唐橋前駅にある松喜屋(TEL077・534・1211)は近江牛専門店。1階の精肉売り場では、2階にあるレストランのシェフが手作りする松喜屋コロッケ(216円)が人気。限定100個。

(2017年8月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

広告
「アートリップ」の新着記事 一覧を見る
くろがね号のゆくえⅡ 長谷川善一作(埼玉県川口市)

くろがね号のゆくえⅡ 
長谷川善一作(埼玉県川口市)

公園内の生い茂る緑の葉を背にした作品は、前から見ると今にも飛び立ちそうな飛行機に見えた。でも横から見ると、クジラのようにも鳥のようにも。

未来都市銀河地球鉄道 山本長実(おさみ)作(岩手県花巻市)

未来都市銀河地球鉄道 
山本長実(おさみ)作(岩手県花巻市)

闇の中に、青く輝く「銀河の世界」が広がる。7月初旬の午後8時ごろ。岩手県・花巻駅前の坂を下ると、道路脇にその壁画はあった。

Karaoke Torii ベノア・マーブリー作(徳島県神山町)

Karaoke Torii 
ベノア・マーブリー作(徳島県神山町)

山々が迫り、川音響く徳島県神山町の休耕地。若いカップルが奇妙な鳥居の前で写真を撮り合う。BGMは、鳥居から流れるソウルフルなバラード――。

階段アート「金魚とスイカ」 福島知里作(埼玉県熊谷市)

階段アート「金魚とスイカ」 
福島知里作(埼玉県熊谷市)

汗をぬぐって見上げると、目の前にカラフルに彩られた階段が現れた。7月初旬のJR熊谷駅正面口。38段にわたって大胆に描かれているのは、水に浮かぶスイカの間をスーイスイと泳ぐ金魚だ。

新着コラム 一覧を見る
国立科学博物館

気になる一品

国立科学博物館

恐竜化石や生物標本を展示する国立科学博物館。グッズ売り場で見つけたのは、オリジナルの靴下「地層・化石ソックス」。

名作椅子【上】 武蔵野美術大学美術館・図書館

目利きのイチオシコレクション

名作椅子【上】 武蔵野美術大学美術館・図書館

用と美を兼ね備え、半世紀以上にわたり製造販売されている名作椅子に、近年注目が集まっています。武蔵野美術大学美術館・図書館は、主に20世紀の欧米と日本の椅子を所蔵しており、中でもデンマークの椅子は一見に値します。

1847(弘化4)年 大判錦絵

美博ノート

歌川芳藤「五拾三次之内猫之怪」

目を見開き、今にも襲いかかってきそうな形相の化け猫。よく見ると、大小様々な猫を集めた「寄せ絵」になっている。

「KURA」のトマト味のパスタ 茄子とベーコン

おんなのイケ麺(めん)

野呂佳代さん
「KURA」の
トマト味のパスタ 茄子とベーコン

7、8年前、友達と何げなく入ったお店で頼んだパスタだったのですが、一口食べて、全然違う!と思いました。とにかく麺がモチモチなんです。

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。