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アートリップ

たつこ像 
舟越保武作(秋田県仙北市)

湖に立つ 黄金の美女

夕日に照らされた湖と「たつこ像」=伊ケ崎忍撮影
夕日に照らされた湖と「たつこ像」=伊ケ崎忍撮影
夕日に照らされた湖と「たつこ像」=伊ケ崎忍撮影 作品近くにある御座石神社境内の「辰子像」=伊ケ崎忍撮影

 瑠璃色に輝く湖面が神秘的な田沢湖を訪れた。周囲の木々はすっかり葉を落とし、冷たい風が肌を刺すようだ。「昔々、湖の近くに暮らしていた辰子という娘がいた。辰子は永遠の美しさを手に入れるため、お告げ通りに泉の水を飲み干し、竜の姿に変わって、田沢湖の竜神となった」。タクシーの運転手さんが話す湖の伝説を聞きながら湖畔を半周すると、湖にしっとりと立つ黄金の美女が現れた。

 辰子をモチーフにした「たつこ像」は、高さ2・3メートル。ブロンズ製の全身が金箔(きんぱく)に覆われている。作者の舟越保武(1912~2002)は戦後の具象彫刻を代表する作家で、ブロンズの他、大理石や砂岩の直彫りでも知られる。本作は1968年に完成し、今年で50周年を迎えた。

 作者の息子で、彫刻家の舟越桂さん(1951~)は「生まれて初めて父の制作を手伝ったのが、たつこ像。高校1年のころです」と振り返る。主に手伝ったのは、衣服のひだの部分。岩手出身の父は物静かで威厳ある人だったそうだが、「意外にうまく出来て、父も喜んでくれました」と桂さん。

 伝説には続きがある。辰子は別の湖の主と恋に落ち、冬は田沢湖で二人仲良く過ごすそうだ。取材中、作品の前で出会った60代夫婦は「娘が早く結婚できるようにお願いしよう」と顔を見合わせて笑った。

(笹木菜々子)

 田沢湖

 秋田県仙北市の中央に位置する、ほぼ円形のカルデラ湖。面積26平方キロ、湖畔1周約20キロ。水深は423.4メートルで日本一。2月23日、24日、たざわ湖スキー場で「2019FISフリースタイルスキーワールドカップ秋田たざわ湖大会」を開催予定。4月~11月、湖を周遊する遊覧船が運航。夏は湖水浴が楽しめ、「たざわ湖・龍神まつり」もある。

 《アクセス》JR田沢湖駅から羽後交通バス「田沢湖一周線」で約30分、「潟尻」下車すぐ。


ぶらり発見

クニマス

 作品から車で5分の田沢湖クニマス未来館(TEL0187・49・8131)では、かつて田沢湖に生息し、絶滅種とされていたが2010年に山梨の西湖で見つかったクニマス=写真=を飼育展示している。午前9時~午後4時。高校生以上300円、6歳以上150円。(火)((祝)の場合は翌日)休み。

 同館から車で12分、山のはちみつ屋(TEL0120・038・318)では、種類豊富なはちみつを販売。人気の「はちみつソフト」(300円)は、アカシアのはちみつを使ったまろやかな味わい。午前9時~午後5時。12月31日、1月1日休み。

(2018年12月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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