三岸節子肖像
開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。
江戸時代に開かれた五街道の中で、もっとも人の行き来が多かった東海道。その道中、最大の難所といえば、「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と馬子唄(うた)にうたわれた大井川だ。
交通の要衝だった東海道は、江戸防衛の目的もあり、主要な川には橋がなかった。駿河(するが)と遠江(とおとうみ)の国境にある大井川は、幅1キロメートル以上。「暴れ川」と呼ばれる急な流れで舟もなく、「川を渡るのは命がけだったようです」と、学芸員の鏡味(かがみ)千佳さん。大雨で水かさが増えれば、渡河禁止となり、宿泊費もかさんだ。
本作は大井川を渡る参勤交代の一行を描いた情景。最後尾には、大名の駕籠(かご)を乗せた輦台(れんだい)を担ぐ人足が急流を進んでいる。対岸の山裾には駿河の金谷宿。一息つけるのはまだ先だ。