私の描くグッとムービー

押切もえさん(モデル・作家)
「プラダを着た悪魔」(2006年)

ファッション界で奮闘 私も

 ニューヨークの一流ファッション雑誌編集部で働くことになったジャーナリスト志望のアンディ。編集長ミランダが命じる無理難題に応えながら、恋愛や夢に悩みます。同じ業界で働く女性として共感しましたね。

 印象的なのが、ミランダの厳格さを想像させる冒頭の場面。彼女の出社が早まると知った部下たちが、食べかけの食事を捨て、サンダルをハイヒールに履き替え、慌てて「戦闘態勢」に入ります。

 編集部で働くうちにおしゃれになっていくアンディにも注目です。シャネルやミュウミュウなどを組み合わせたスタイルがすてき! 努力してセンスを磨いた経験が、私にもあります。自分らしさを模索していた、雑誌の専属モデル時代のこと。ポーズや表情にいかそうと、たくさんの写真集や映画に触れました。

 「プラダを着た悪魔」は私のキャリアにも直接影響を与えてくれました。公開時、日本版ポスターに私の脚の写真が使われたんです。イラストはそのハイヒール姿。劇中の衣装を手がけた世界的なスタイリストともテレビの英語教育番組で対談し、それがきっかけでレギュラー出演することになりました。

 アンディの終盤の行動に、当時は納得できなかった。今なら、彼女が内面的に充実した上で決断したことに意味を感じます。決断といえば私も昨年、専属モデルを卒業し、結婚もしました。新たな気持ちで映画を見直せたことを、うれしく思います。

聞き手・中村和歌菜

 

  監督=デビッド・フランケル
  製作=米
  出演=メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラントほか
おしきり・もえ
 モデル業のかたわら、二科展絵画部門に2015年、16年と連続入選。短編連作小説「永遠とは違う一日」(新潮社)で山本周五郎賞候補に。

(2017年4月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

広告
「私の描くグッとムービー」の新着記事 一覧を見る
佐々木充彦さん(漫画家)「羊たちの沈黙」(1991年)

佐々木充彦さん(漫画家)
「羊たちの沈黙」(1991年)

連続殺人犯を追うFBI実習生クラリスと、猟奇殺人鬼で元精神科医のレクター博士の奇妙な交流を描いた物語です。実は続編の「ハンニバル」を先に劇場で見て、何が面白いのか訳が分からなかったんですよ。

みやこしあきこさん(絵本作家)「めぐり逢わせのお弁当」(2013年)

みやこしあきこさん(絵本作家)
「めぐり逢わせのお弁当」(2013年)

平坦(へいたん)な日常の中に、いつもと違うことがふと起こるお話が好きです。リアリティーの中に生まれるワクワク感。私の絵本制作にも通じる部分です。

新井英樹さん(漫画家)「横道世之介」(2012年)

新井英樹さん(漫画家)
「横道世之介」(2012年)

長崎から上京した横道世之介と大学生活1年目に出会う人々のエピソードが描かれている。でも、「ただの青春映画か」なんて敬遠せずに見て欲しい。

太田和彦さん(アートディレクター)「いぬ」(1963年)

太田和彦さん(アートディレクター)
「いぬ」(1963年)

暗黒街に生きる男を描いたフィルム・ノワールが好きで、そのきっかけとなったのが、メルヴィル監督でした。「いぬ」は公開当時に見て、こいつはかっこいい映画だなって。

新着コラム 一覧を見る
「神農の虎」

美博ノート

「神農の虎」

ユニークな表情をした動物の張り子や愛らしい土人形、色鮮やかな凧(たこ)など、日本各地に伝わる郷土玩具。本展では、戦後に作られた所蔵品から約550点が府県別に並ぶ。

中近東文化センター附属博物館

気になる一品

中近東文化センター附属博物館

エジプトやメソポタミア文明を紹介する中近東文化センター附属博物館。約4千年前にナイル川周辺で作られたガラス質のカバ像が「ルリカ」の愛称で人気だ。

一石を投じる 島袋(しまぶく)道浩作(札幌市中央区)

アートリップ

一石を投じる 
島袋(しまぶく)道浩作(札幌市中央区)

新緑の大通公園を通り抜けた先、札幌市資料館前にそびえる巨石が現れた。高さ約2・5メートル。自然石だが、れっきとしたアート作品だ。かつては北海道庁の前に置かれ、様々な意見が飛び交うなど、「波紋」を呼んだ。

陶片 出光美術館

私のイチオシコレクション

陶片 出光美術館

一見すると、いびつな陶磁器のかけら。でもこの小さな陶片には、歴史や文化をひもとく情報が詰まっています。

☆新コラム☆

マイページへ 新規会員登録

プレゼント応募時に1度会員登録をされると、以後はパスワードなどの入力だけでご応募いただけます。