目利きのイチオシコレクション

色絵【下】 石川県九谷焼美術館

再興九谷の優品がずらり

「赤絵金彩松図瓢形大瓶」 宮本屋窯 江戸時代後期

「赤絵金彩松図瓢形大瓶」 宮本屋窯 江戸時代後期

  • 「赤絵金彩松図瓢形大瓶」 宮本屋窯 江戸時代後期
  • 「百合図平鉢」 吉田屋窯 江戸時代後期

 今回は、色絵の中でも「再興九谷」に焦点を当てて紹介します。

 再興九谷とは、一度閉窯した九谷焼の再興を願って、江戸時代後期に加賀の陶工が起こした窯の総称です。それ以前は「古九谷」と呼ばれ、これらの優品を網羅するのが、石川県九谷焼美術館です。

 再興九谷を興したのは吉田屋窯です。1824年に、石川県加賀市の九谷町に開窯。初期の九谷焼の流れを継承します。やがて、吉田屋窯が廃窯すると、1832年に吉田屋窯の元支配人が宮本屋窯を開窯。色絵の技術が発展していきます。

 「赤絵金彩松図瓢形大瓶(ひさごがたたいへい)」は宮本屋窯の傑作。赤の上に金で模様を描き、色の濃淡や線の太さで細密表現する「赤絵金襴手(きんらんで)」で制作。この技法は幕末~明治に輸出用に使われ、職人が1人で手がける模様は、超絶技巧といえます。

 一方、同じ再興九谷でも印象が異なる「百合図平鉢」は、吉田屋窯の作品。この品は、初期の九谷焼の特徴「青手(あおで)」で絵付けしています。青手は黄、緑、紫、紺青の絵の具を厚く塗る技法。地を黄で塗り、紫と紺青のユリを大胆な構図で描いています。古九谷様式を踏襲しながらも、それに負けない魅力があります。

 九谷焼は一度途切れた技。再び焼かれた後も伝統を継承しながら発展し、それは現代にも続いています。

(聞き手・吉田愛)


どんなコレクション?

 九谷焼を収集し、展示する加賀市立の美術館で、2002年に開館。古九谷から近現代までの約1700点を所蔵する。作品は「青手の間」「赤絵・金襴の間」「色絵・五彩の間」の様式ごとに公開し、歴史や、技法を解説する。常設展示のほか、年に数回、企画展を開催する。(土)(日)(祝)はボランティアガイドによる解説も(要予約)。

 紹介した2点は、5月6日まで開催の「古九谷帰郷牡丹の大皿に観る『筆の冴え』」で公開中。

《石川県九谷焼美術館》 石川県加賀市大聖寺地方町1の10の13(TEL0761・72・7466)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。500円。(祝)を除く(月)休み。

美術評論家 森孝一

森孝一さん

 もり・こういち 1951年生まれ。日本陶磁協会常任理事。雑誌「陶説」を編集するかたわら、美術館やギャラリーでの企画も手がける。「陶芸家になるには」(共著)、「器の手帖(てちょう)」(監修)、「文士と骨董(こっとう)」(編集)など。

(2018年3月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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