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街の十八番

蔓青園(まんせいえん)@さいたま市

日本の盆栽を世界へ

白い勇壮な幹を見せる真柏のそばに立つ加藤初治さん。山で採取してから約40年になる
白い勇壮な幹を見せる真柏のそばに立つ加藤初治さん。山で採取してから約40年になる
白い勇壮な幹を見せる真柏のそばに立つ加藤初治さん。山で採取してから約40年になる 室内に飾った五葉松。株立ちといって1本の木でできている。盆栽は1鉢2千円~10万円以上

 さいたま市にある大宮盆栽村。閑静な住宅地に、盆栽園6園が点在する。地名は、1923(大正12)年の関東大震災後、東京から移り住んだ盆栽業者たちが、この地を開拓したことにちなむ。

 当初盆栽園を営んでいた約20園のうち、唯一今も続いているのが蔓青園だ。4代目園主、加藤初治さん(75)は、長男で5代目の崇寿(たかひろ)さん(49)とともに、昔、山から採取された新木(あらき)を仕入れ、道具や針金を使って形を作り、数年かけて芸術品に仕上げている。

 広々とした園内には、白い幹が大きくうねった樹齢2千年といわれる真柏(しんぱく)の古木や祖父が国後島で手に入れた青々としたエゾマツなど、代々受け継がれたものを含め大小約500鉢が並ぶ。

 今年の春、埼玉で第8回世界盆栽大会が開かれ、初治さんは実行委員長を務めた。父の三郎さんは盆栽を世界に広めるため、第1回大会の開催に尽力した。「再び地元で世界大会を実現できてよかった」と振り返る。「盆栽の魅力は、鉢の中に一つの景色をつくること。自然の美しさが一番です」と笑った。

(文・写真 石井久美子)


 ◆さいたま市北区盆栽町285(TEL048・663・2636)。午前9時~午後4時。木曜定休。土呂駅。

(2017年10月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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