ルーレット
家のボールやおたまでアート。今も新鮮な前衛の魅力。
まるで機械仕掛けの卵。ぎっしりと詰まっているものの中には、黒電話の一部やファスナーも。
作者の中西夏之(1935~2016)は、高松次郎、赤瀬川原平と結成した前衛グループ「ハイレッド・センター」の活動でも知られる。
卵をかたどったポリエステル樹脂に日用品を封じ込めた「コンパクト・オブジェ」シリーズは1960年代、電車内に持ち込んで日常を攪乱するパフォーマンスの道具として制作された。
この3点は、現代美術の画商・浅川邦夫さん(92)が足利市立美術館に寄贈したコレクション。浅川さんが勤めていた画廊に5点あったうちの2点を画廊主が売ってしまい、「中西が、これは5点セットだと怒った」という思い出話が、会場で紹介されている。
特任学芸員の大野俊治さんは、「現代からみれば、まるで60年代のタイムカプセルのようだ」と捉える。