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ぶらり、ミュージアム

青いハーブティー!?
カイユボット作品と味わって

(ブリヂストン美術館)

ブルー・マロウティーとアップルタルトのセット
ブルー・マロウティーとアップルタルトのセットは900円
ブルー・マロウティーとアップルタルトのセット 壁をブルーにした会場 「カイユボット展」ポスター

 ご飯に「青いふりかけ」をかけ、食欲を抑えるといった「青色ダイエット」なる怪しげなものが一時話題になったように、青色の食べ物には食欲を減退させる効果があります。ジューシーな肉汁たっぷりのお肉が、もし青色だったら…想像しただけでもげんなりしてしまいますよね。自然界に存在しない幻の「青い薔薇」、以前品種改良で誕生した「ブルーヘブン」という青い薔薇の苗を購入しましたが、とても病気に弱く上手く育てることが出来ませんでした。

 このように自然界では滅多に目にすることの出来ない青色ですが、美術の世界では古来より神聖な色であり、とりわけ西洋美術史においては特別な色として尊ばれてきました。「フェルメール・ブルー」には貴石であるラピスラズリ(天然ウルトラマリン)が用いられたことでもよく知られています。自然界に無い色だからこそ、逆にその希少性から特権的なものとして重要な作品に用いられてきました。

 現在ブリヂストン美術館で開催中の「カイユボット展 ― 都市の印象派」では、テーマカラーとしてポスターや特設サイトで全面的にこの青色を用いて展開しています。駅の広告でもパッと目に飛び込み記憶に残る深い青色が実に効果的であり印象的です。印象派の画家たちを支えつつ自らも絵筆をとり変わりゆく都市の情景を描いたカイユボットの日本で初めての回顧展に相応しい美しいテーマカラーです。

 この展覧会の開催を記念して、ブリヂストン美術館内にあるティールーム「ジョルジェット」では展覧会コラボメニューとしてフランス産のオーガニックブルーマロウを使用した「ブルーマロウ・ティー」を提供しています。そう、青いハーブティーです!普段なら食欲減退してしまう青い飲み物も、カイユボットの作品に魅了された後なら必ずや美味しく感じるはずです。青いブルーマロウ・ティーと カイユボットのシルエットをシナモンパウダーで添えたアップルタルトをセットで注文するのもいいですね。このハーブティーはレモンを入れると素敵なサプライズも待っています。青って実は「美味しい」のかもしれません。

 カイユボット展 | ブリヂストン美術館
 
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/caillebotte/

 ティールーム ジョルジェット | ブリヂストン美術館
 http://www.bridgestone-museum.gr.jp/tearoom/

 

耳よりばなし

 ブリヂストン美術館は開館以来半世紀以上にわたりパブリックプログラムとして「土曜講座」(土曜日開催の講演会)を設けています。今でこそ展覧会関連の講演会が当たり前の存在となっていますが、ブリヂストン美術館土曜講座では、美術を中心に幅広いジャンルの専門家を招き400円という驚きの安さの聴講料でアートファンを魅了しています。充実したコレクションのみならず、こうした外へ向けてのたゆまない努力が「ベテラン美術館」の大きな魅力のひとつとなっています。


データ

ブリヂストン美術館

〒104-0031
東京都中央区京橋1-10-1
開館時間:午前10時~午後6時(毎週金曜日は午後8時まで)
※(入館は閉館の30分前まで)

休館日:月曜日(12月16日、祝休は開館)
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:http://www.bridgestone-museum.gr.jp/


 【筆者プロフィール】

中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/

(2013年12月9日掲載。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は更新時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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