読んでたのしい、当たってうれしい。

小泉凡さん
駒形どぜう どぜうなべ

 NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」の主人公トキとヘブン夫婦のモデルは僕の曽祖父母、小泉セツと八雲です。講演でお招きいただき、あちこちに足を運びます。行く先々の味は楽しみですが、このどぜうなべは特別です。

 松江で暮らして長くなりましたが、生まれも育ちも東京。駒形どぜうは亡き父が親しんだ店でした。初めて連れて行かれたのは小学生のころ。外食なんてたまの楽しみで、どぜうなべにイチコロ。新婚旅行の帰路にもこの味が恋しくなって寄ったものです。

 骨の食感が心地よく、ぐつぐつ煮るにつれ、こっくりとした味がしみてきます。だしのふっくらした香り、シャキシャキの白ネギにはやしたてられ、箸が進みます。

 父と僕のそばでは、たいてい職人風のおじさんが鍋をつつきながら一杯やっていました。粋な感じでしたね。近くに雷門もあり、日が暮れるといっそう下町の風情に包まれるようでした。

 拙著「セツと八雲」(朝日新書)でもふれましたが、日本が激変した明治期に来日した八雲が愛惜したのは「日本の面影」でした。洋食好みではありましたが(笑)。祖父や父も八雲と同じく、変わらぬ風情に思い入れがありました。僕がこの店にひかれてやまないのは、自然な流れなのかもしれません。

(聞き手・木元健二)

 

 ◆東京都台東区駒形1の7の12(☎050・5448・6266)。創業は1801年。どぜうなべ3380円。午前11時~午後8時半(ラストオーダー8時)。不定休。

 


 

 こいずみ・ぼん 1961年生まれ、87年から松江市で暮らす。民俗学者として島根県立大学などで教壇に立ちつつ小泉八雲記念館館長を務める。著書に「セツと八雲」のほか「怪談四代記 八雲のいたずら」(講談社文庫)など。
 
 
 
朝日カルチャーセンター講座
「セツと八雲 ひ孫が語るとっておきの秘話」
 小泉八雲の怪談「耳なし芳一」の浪曲版を木村勝千代さんが披露する口演(曲師は広沢美舟さん)が3月19日(木)15:30~17:00、東京・新宿の朝日カルチャーセンター新宿教室で開かれます。八雲とその妻セツのひ孫、小泉凡さんのトークもあります。申し込みは☎03・3344・1941へ。
 

「セツと八雲」申し込みサイト
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=8616499

(2026年2月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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