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マリオンTIMES

伝統工芸を誰もが輝ける舞台に
「金継ぎ」が社会と障害者を新たにつなぐ/大阪

「TOITSUGI」を立ち上げた田葉尚美さん

2026年6月、大阪市港区の観光名所・天保山マーケットプレースに、金継ぎアップサイクルブランド「TOITSUGI(といつぎ)」の常設販売がスタートした。

金継ぎは割れたり、欠けたりした陶磁器などを漆で接着し、金粉などで装飾する日本の伝統技術。色とりどりの陶器のかけらに、障害者の手によって新たな命を吹き込み、ピアスやイヤリングなどのアクセサリーに生まれ変わらせる試みが注目されている。

金継ぎによって生まれ変わったアクセサリー(田葉さん提供

   

■「なぜ安いんだろう」から始まった挑戦

ブランドを立ち上げたのは、tohito代表の田葉尚美さん。伝統工芸を「手段」として、障害者の新しい働き方の創造を目指している。

美術大学を卒業後、広告会社で18年間、マーケティングや新規事業開発に携わった田葉さん。

障害者福祉を身近に感じるようになったきっかけは、看護師としてボランティア活動に熱心だった母親の存在だった。

幼い頃、田葉さんの心に、ある疑問が湧いた。「就労継続支援B型事業所で作られたクッキーやパンはとてもおいしいのに、なぜこんなに安いんだろう」

広告会社でマーケティングを学ぶうち、その理由の一つに、商品の魅力を伝える「ブランディング」や、商品を届ける「販路」が十分ではないことがあるのではと考えるようになった。

「いつか、この課題を解決したい」。そんな思いを抱えながら働き、MBA(経営学修士)も取得。「障がい者就労の価値最大化」を研究テーマに、起業の道へ進んだ。

金継ぎの作業に取り組む、就労継続支援B型事業所の利用者(同)

   

■福祉の現場とつくる新しい仕組み

田葉さんが事業に選んだのは、世界的にも注目されている「金継ぎ」。

寄付された割れた器を、そのまま修復するのではなく、新たな価値を付けて、アクセサリーに生まれ変わらせる。福祉の現場で無理なく続けられる仕組みにしたいという発想から生まれた。

「事業所の皆さんは『作ること』のプロです。私はデザインや材料、マニュアル、販売先などを用意して、一緒にものづくりをします。在庫を抱えるリスクがなく、一つ売れれば、きちんと収益にもつながる。そんな仕組みを目指しています」

現在は、大阪府内の三つの就労継続支援B型事業所と提携。それぞれの利用者の得意なこと、苦手なことに合わせて作業を分担している。漆にかぶれるリスクがない「モダン金継ぎ」の手法を取り入れるなど、安心して作業できる環境づくりにも気を配っている。

金継ぎを施した陶器片のピアス、イヤリングなどアクセサリー、器など約30点を販売する

   

■「かわいい」と言われるのがうれしい

ブランド名の「TOITSUGI(といつぎ)」には、田葉さんの思いが込められている。

「障害者に関する社会の固定観念に対して、常に問いを投げかけたいと思っています。一人でできることには限りがあっても、それぞれの力を継ぎ合わせれば、新しい価値を生み出せる。そんな思いを込めました」。

アクセサリーを手がける作業所利用者からは、「自分の作ったものが『かわいい』と言われるのがうれしい」という声も届き、「私自身、彼らから“働くことの本来の喜び”を教えてもらっているような気がします」と話す。

6月に始まった天保山での常設販売では、大型客船が発着する立地もあり、海外からの観光客にも好評だ。今後は海外でも人気の高い「フェイク盆栽」など、ほかの伝統工芸にも取り組もうと考えている。「障害のある方が職人として活躍し、日本文化を世界に発信する。そして、そこで生まれた収益が、また彼らに還元される。そんな循環をつくっていきたいですね」


「TOITSUGI」の常設店は大阪市港区海岸通1丁目の天保山マーケットプレース2階「JINTO」店内。
営業時間は午前10時半~午後8時。
ホームページ https://toitsugi.com/ 

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