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ひとえきがたり

遠野駅(岩手県、JR釜石線)

「象徴」の取り壊し 論議は続く

雨がそぼ降る遠野駅。ホテルが閉鎖された後、2階に明かりがともることはない=岩手県遠野市新穀町
雨がそぼ降る遠野駅。ホテルが閉鎖された後、2階に明かりがともることはない=岩手県遠野市新穀町
雨がそぼ降る遠野駅。ホテルが閉鎖された後、2階に明かりがともることはない=岩手県遠野市新穀町 地図

 田園風景を抜けると、重厚な佇(たたず)まいの駅舎が現れる。欧州の建築様式を採り入れた瓦屋根の2階建て。1950年建造の駅舎は今取り壊し論争の渦中にある。

 東日本大震災で市庁舎が全壊した遠野市。駅舎には大きな損傷はなかったが、老朽化が進んでいたため、JR東日本は昨年1月、駅舎を3分の1の規模に建て直す計画を発表した。駅舎1階の一部と2階は、95年に開業したホテル「フォルクローロ遠野」が使用していたが、発表を受けて2カ月後に閉鎖。現在駅舎の3分の2ほどが使用されていない状態だ。

 この計画に異論を唱える人たちがいる。「遠野昔話語り部の会」の事務局、工藤さのみさん(71)もその一人だ。「民話の里にぴったりの駅舎なんだ。無くなったら寂しい」と語る。

 柳田国男の「遠野物語」ゆかりの市は、遠野駅をシンボルに「民話の里」づくりを進めてきた。JRの発表を受け、70の市民団体・企業と「遠野駅舎の未来を考える会」を結成しJR側と話し合いを続けている。駅舎を保存活用する案もあるが、耐震補強工事は技術的に困難と予想されるため、駅と市が協働して同等の規模や外観で再建する案も出ている。

 同会会長で駅近くの商業施設「とぴあ」の理事長、河野好宣さん(70)は、かつて駅前で書店も経営し、駅と町の変遷を見続けてきた。「マッチ箱みたいな駅にはしたくない」。その言葉に「民話の里」住民の誇りが滲(にじ)んだ。

撮影 安達麻里子 

 沿線ぶらり  

 JR釜石線は、花巻駅(岩手県花巻市)と釜石駅(釜石市)を結ぶ90.2キロ。

 古くから人と馬とが共存してきた遠野は、馬の産地としても知られる。遠野馬の里(TEL0198・62・5561)は遠野駅からバスで約20分。インストラクターが馬を引率する引き馬(500円)や一般乗馬(3500円、高校生以下2000円)の体験ができる。6月中旬の正午、遠野駅から2駅の岩手二日町駅近くで馬とSL機関車の並走イベントを開催。3頭の馬とSL銀河が約500メートルを並走する。詳細は5月下旬にホームページで発表。

 

興味津々
かっぱ(ぞれぞれの楽しみ)

 駅前広場には、かっぱ(それぞれの楽しみ)と題された4体のカッパ像がある。彫刻家・池田宗弘さんの制作で1990年ごろに設置された。冬季は手編みのマフラー、9月の遠野まつりの時期には法被と鉢巻きを着用した姿が見られる。

(2016年3月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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