読んでたのしい、当たってうれしい。

ひとえきがたり

  • 桑名駅
    (三重県、JR関西線)
    下り1番ホームのわきに、その詩碑はあった。――桑名の夜は暗かつた/蛙(かえる)がコロコロ鳴いてゐた/夜更の驛(えき)には驛長が/綺麗(きれい)な砂利を敷き詰めた/プラツトホームに只獨(ただひと)り/ランプを持つて立つてゐた

    2014/10/07 更新


  • 下風呂駅
    (青森県、大間線=未成線)
    足湯につかった女性が、カメラを手に津軽海峡を見つめる。水平線に浮かぶのは北海道の恵山岬。かたわらには「しもふろ」の駅名標。だが、この「駅」に列車が到着することはない、昔も今も。

    2014/09/30 更新


  • 川原湯(かわらゆ)温泉駅
    (群馬県、JR吾妻線)
    「関東の耶馬渓」と称される吾妻(あがつま)渓谷と並行して電車が走る。長さ7.2メートル、日本一短いとされる樽沢トンネルを抜けると、川原湯温泉駅は近い。

    2014/09/16 更新


  • 備後矢野駅
    (広島県、JR福塩(ふくえん)線)
    「うどんは今度、彼氏と食べに来たらええけぇ」。取材が終わると、里武三(たけそう)さん(63)はそう言って送り出してくれた。「結婚の報告を兼ねて、今度は2人でいらっしゃい」と笑いながら。

    2014/09/09 更新


  • 宇都井(うづい)駅
    (島根県、JR三江(さんこう)線)
    汗を拭いながら116段の階段を上った。ホームは地上約20メートル。見下ろせば、山に囲まれて水田が青々と輝く。

    2014/09/02 更新


  • 島越(しまのこし)駅
    (岩手県、三陸鉄道北リアス線)
    今年4月に全線復旧したばかりの三陸鉄道に乗りにきた鉄道ファンや家族連れが、新築の香りがする駅舎からホームに出てきた。「列車が走る姿を見るだけで感動するなんて」と年配の女性。人影のない海岸に波が打ち寄せる。

    2014/08/26 更新


  • 港町(みなとちょう)駅
    (神奈川県、京急大師線)
    工業地帯を縫うようにして赤い電車が近づくと、ホームに昭和の歌姫、美空ひばりの「港町(みなとまち)十三番地」のメロディーが流れ出す。

    2014/08/19 更新


  • 岳南原田駅(静岡県、岳南電車) 土曜日の午後9時過ぎ、十数人の男女がホームの思い思いの場所にカメラの三脚を据え付けた。狙うのは日本製紙吉永工場。夜の工場にレンズを向け、シャッターを切り、次の構図を考える。「富士工場夜景倶楽部(くらぶ)」のメンバーたちだ。

    2014/08/05 更新


  • 洗馬橋(せんばばし)電停(熊本県、熊本市電) 路面電車を待つ人の横で、親子のタヌキが手をつないで空を見上げる。電車の接近を知らせる「あんたがたどこさ」のメロディーがのんびり響き始めた。

    2014/07/29 更新


  • 御代田(みよた)駅(長野県、しなの鉄道) ガラス張りのドアの上に「放送中」の赤いランプがともった。男女がカメラに向かってトークを繰り広げる。切符売り場の隣、6畳ほどの小さな部屋。「西軽井沢ケーブルテレビ」のスタジオだ。

    2014/07/22 更新