読んでたのしい、当たってうれしい。

challenger

「世界のグルメ」で味付けした”カワイイ”サバ缶づくり<1>

青森県八戸市の水産加工会社「マルヌシ」

商品を手にする社員のみなさん
商品を手にする社員のみなさん
商品を手にする社員のみなさん 味は現在6種類。津軽海峡の塩、トムヤムクン、グリーンカレー、ゆずこしょう、ハバネロ、アヒージョ(いずれも410円) 八戸市内にある観光交流施設「八戸ポータルミュージアムはっち」内の「カネイリミュージアムショップ」では、商品のロゴが入った木箱にカラフルな缶詰が並ぶ

 トムヤムクン、グリーンカレー、アヒージョ……。「世界のグルメ」をテーマにした味付けや、「カワイイ」がコンセプトのおしゃれなパッケージが特長のサバ缶「八戸サバ缶バー(HACHINOHE 38CANBAR)」が、サバの水揚げが全国有数の八戸港をもつ青森県八戸市内で注目されている。八戸では近年なぜか、サバの成魚が小型化している。増えた小型サバの活用と地域活性化を結びつけた市内の水産加工会社「マルヌシ」の担当役員(36)に商品開発の思いを聞いた。

(渋谷唯子)

 ――缶パッケージのデザインが斬新です。デザインを意識するきっかけに何かあったのでしょうか。

 今の仕事に就く前は、地方新聞社に勤務し、紙面の見出しやレイアウトを考える整理部という部署に配属された経験がありました。水産加工会社に就職後、商品開発を担当することになりましたが、そこで気づいたのは、これまで中身を作ることばかりに力を入れ、パッケージづくりは外部の会社に任せ、商品のコンセプトや特長をデザインに落とし込めていなかったことです。デザインの重要性を確信したのは、2015年の「おいしい東北パッケージデザイン展」です。弊社にもともとあった商品「いか三升漬」のパッケージデザインを新しくして出品したら、消費者の反応がまったく異なり、埋もれていた商品が注目されるようになりました。中身を作るだけでは「商品製造」。中身の魅力をお客様に伝えるところまでが「商品開発」です。その意味で、地方のメーカーが魅力を伝え切れていない商品はまだ多いと思います。

 ――パッケージデザインは、どなたが担当されたのでしょうか。

ピーナツバターとの出会い

 八戸市在住のデザイナーの斎藤亨さんにお願いしました。これまでのデザインの決め方とは異なり、一貫したコンセプトを持って一つの商品を作ることができました。女性からは「カワイイ」、男性からは「アイデアがおもしろい」「よく実現しましたね」という声が多いです。中身だけでなく、魅力を伝えるところまで手を抜かずに作った商品は、愛着を持ってもらえるんだと実感しました。SNSにアレンジレシピを投稿してくださる方もいて、商品を自由に楽しんでいただけてうれしいです。

 

<1> <2>

(2018年7月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

ザ・チャレンジャーの新着記事

  • スペイン発の新競技「パデル」普及に情熱<1> 透明の強化ガラスと金網に囲まれたコート。数十の小さな穴が開いた板状のラケットで、ネットをはさみ黄色いボールを打ち返す。スペイン発の新競技「パデル」は、身体的負担が少なく、お年寄りから子供まで、誰でも簡単にできるスポーツとして近年注目を集めている。

  • ピーナツバターで地域を盛り上げる スケートボードとサーフィンを愛する若者たちが、千葉県産の落花生を加工したピーナツバター「ハッピーナッツデイ」が注目されている。添加物を使わず、素材の味をいかした濃厚なピーナツバターは、オンラインストアのほか全国で取り扱いは138店舗にまで広がった。

  • 米ニューヨークで岡山デニムの魅力伝える 岡山県倉敷市児島地区の干拓地では江戸時代から綿花が盛んに栽培され、繊維産業が発展。1960年代、ジーンズ生産が始まり、独自の染色や加工技術も加わって、高品質な「岡山デニム」が誕生した。

  • 作り手にスポットライトを当てたい 日本の食文化に欠かせない醤油(しょうゆ)。一升瓶やペットボトル入りを近所のスーパーや醸造元で買い求めるのが日常の風景だ。

新着コラム