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私の描くグッとムービー

座二郎さん(通勤漫画家)
「大砲の街」(1995年)

絵が語る、ストーリー

座二郎さん(通勤漫画家)<br>「大砲の街」(1995年)

 映画って、つじつまとかあまり大事じゃないと思っています。ストーリーで感動させるというより、「これを描きたい!」という作家性が感じられるものが好きです。この作品は大友克洋さんが総監督した3部構成のオムニバスアニメ「MEMORIES」の中の1編。大友さんは街そのものを見せることだけにこだわったと思うんです。

 舞台は生活のすべてが大砲を中心に回る都市。ストーリーにクライマックスがあるわけではなく、少年が朝起きるところから寝るまでの1日を淡々と描いている。朝、お父さんと一緒に「撃ってきまーす」と家を出て駅に向かうシーンで、壁のない素通しのエレベーターが街を見下ろしながら降下していく描写がすごく強烈に印象に残っています。場面の切り替えがない「ワンシーン・ワンカット」の映像で話が展開していく感じがすごくいい。手描きとCGを融合させた作画も、当時としてはすごい技術だったと思いますよね。

 私はゼネコンで建築の仕事をしながら、通勤中に漫画を描いています。3次元の空間を2次元の図面で共有する点で建築と漫画は相性がいい。漫画のコマ割りと建築の断面図はすごく似てる。漫画の物語が上から下へと進むように、絵で話を説明する意味でもこの作品は非常に優れています。

 実は、香港にあった九龍城砦(じょうさい)や長崎の軍艦島とか、密集した都市が素敵だなというのが私の中にあって。この作品もそう。密集した街への憧れみたいなものを九龍城砦にちなんで〝クーロニズム〟と自分で名付けたのですが、結局そういうものが好きなんだろうなあ。

(聞き手・吉﨑未希)

  監督・脚本・原作ほか=大友克洋
  CGI=安藤裕章
  声の出演=林勇、キートン山田、山本圭子ほか
ざじろう
 1974年生まれ。2012年に「RAPID COMMUTER UNDERGROUND」が第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に選出。
(2020年4月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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