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私の描くグッとムービー

中野なかるてぃんさん(お笑い芸人)
アヒルと鴨のコインロッカー(2006年)

あの頃の気持ち 広辞苑に詰め込んで

 大学入学のため仙台に引っ越し、右も左もわからない中で事件に巻き込まれていく主人公・椎名。「ブータンの留学生ドルジのために、本屋を襲って広辞苑を盗もう」ともちかけられる。最初見た時は何が起きているか分からなかったです。
 僕が中3の時、2009年ごろにレンタルショップで借りて、初めて見ました。もともと伊坂幸太郎が好きだったけど、この映画は原作を読んだことがなくて。読んだことないものを見てみようと思ったのがきっかけです。「強盗」「ピストル」とか耳なじみがあってワクワクする単語がちりばめられていて、謎めいた「シャローンとマーロンの猫の話」にも中学生心をくすぐられましたね。この作品で知ったボブ・ディランの「風に吹かれて」には、ものすごくはまりました。高1の時には音楽の授業で1人1曲発表することになって、「風に吹かれて」を歌ったくらいです。
 僕は山梨県出身で、一橋大学入学を機に上京しました。国立は少し田舎な雰囲気が仙台と似ています。しかも僕は椎名と同じ法学部。アパートが並ぶ町並みとか、椎名が教科書を抱えているところとか、たぶん5月くらいまでしかつるまないやつとしゃべっているシーンとかがすごくリアルに感じました。今も活躍している出演者の面々が若いというのも合わさって、今見ると自分の中の「あの頃」がかき立てられます。
 ドルジが欲しがったという広辞苑には全部の言葉が載っているんじゃないかと思って、広辞苑の中に印象的なシーンを詰め込んだ絵を描きました。

(聞き手・千葉菜々)

 

 
   監督=中村義洋   

 原作=伊坂幸太郎   

 出演=濱田岳、瑛太、関めぐみ、大塚寧々、松田龍平、関暁夫ほか

 

 1994年生まれ。2017年にヤスと「ナイチンゲールダンス」結成。YouTubeで動画を毎日配信中。 

 

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