鉄道系ミュージアムは各地にありますが、当館のコンセプトは「高速鉄道技術の進歩」。特に新幹線は初代0系から100系、300系、700系、N700系まで計13両あり、保有数は全国一です。JR東海所有のドクターイエロー「T4編成」7号車は、6月に加わったばかりのニューフェース。ダイヤ非公開だったため「見ると幸せになる」と人気でしたが、今年1月末に惜しまれながら引退した車両です。
東海道・山陽新幹線の点検車両で鮮やかな黄色の車体からドクターイエローと親しまれましたが、正式名は「923形新幹線電気軌道総合試験車」。展示車両は全長27.35メートル、重量は41.7トン。先頭のライト下に積んだ監視用カメラが特徴的です。各車両に検査機器を搭載していましたが、7号車は唯一、営業車と同じ座席が50席ありました。来館者は座れるので貴重です。
検測走行はほぼ10日に1回。計測員6人を乗せて2日かけて東京―博多間を往復し、列車に電気を送る電線の摩耗やレールのゆがみなどをチェックしていました。データは整備計画に反映されたので、まさしく「かかりつけ医」。安全で安定した高速輸送を裏で支えた立役者でした。
6月14日の展示後は来館者も増えました。ドクターイエロー柄のTシャツを着て車両前で記念写真を撮る人も多く、大いに愛された車両なのだと感じています。
館のコンセプトを最も象徴する車両が「超電導リニア MLX01―1」です。山梨県のリニア実験線で2003年、当時の世界最速の時速581キロを記録しました。15年に後継L0系車両が時速603キロを出して記録を更新しましたが、この「MLX01―1」は実用性に先鞭をつけた車両です。
「反発したり、くっついたりする磁石の力で浮いて走る」というリニアの原理は、体験装置などで紹介。リニア車両の客室を模した空間では車窓の映像で時速500キロの世界を体感できます。
(聞き手・尾島武子)
《リニア・鉄道館》 名古屋市港区金城ふ頭3の2の2(☎052・389・6100)。午前10時~午後5時半(入館は30分前まで)。1200円(小中高生500円、3歳以上の未就学児200円)。8月12日を除く火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始休み。
![]() 館長 岡部仁 おかべ・ひとし 1990年JR東海入社。新幹線鉄道事業本部車両部検修課長、大阪仕業検査車両所長、名古屋工場長などを経て2023年から現職。 |