読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「花」

アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン(ヤマザキマザック美術館)

「花」
1902-07年 千葉県立美術館蔵

 浅井忠(ちゅう)が留学した20世紀初頭のフランスでは、優美な曲線を用いた美術様式「アールヌーボー」が席巻していた。パリの街中は、植物や女性をモチーフにした華やかなグラフィックや工芸デザインがあふれ、浅井は、「線のずるずる延びたるぐりぐり式」「何しろ新式を以て人を驚かし当世に歓迎致され居申候」と書き記している。

 「新しい芸術」に感化された浅井は、風景画を描く一方で、「珍模様」と称する図案の制作に着手。二百点以上の作品を残した。赤や黄、白などのケシの花と葉がうねるような様相の本作もその一つ。主任学芸員の吉村有子さんは「少々皮肉を込めて語りながらも、アールヌーボーを自分の図案に採り入れ、予想以上の出来栄えを楽しんでいたのでは」と語る。

(2018年12月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

今、あなたにオススメ

美博ノートの新着記事

  • トヨタライトバス 「トヨタライトバス」は1963~69年、当時の荒川車体工業(現トヨタ車体)が製造した22人乗りの小型バス。

  • トラバント601ユニバーサル トラバントは旧東ドイツ唯一の大衆車。1958年から30年以上にわたって製造され、「トラビ」の愛称で親しまれた。

  • 金銅五鈷鈴(こんどうごこれい) 本作は、密教の儀式で用いられる仏具「金剛鈴」の一種。鈴を振り鳴らすことで仏の注意を引き、歓喜させるという。

  • 陶による岩の群 山から削り出したような大きな岩。ゴツゴツとした手触りや重みが感じられるが、実はやきもので、中は空洞だ。鉄などが素材の重量級作品が並ぶ「ハードロック/ヘヴィメタル」のコーナーで紹介されている。

新着コラム