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美博ノート

鰊鉢

豊田市民芸館「おいしい民窯 食のうつわ」

福島県会津本郷 縦23.9×横32.7×高さ17.4センチ 豊田市民芸館蔵

 福島県会津地方の郷土料理、ニシンの山椒漬けを保存するための鰊鉢(にしんばち)。手がけたのは会津本郷焼の宗像(むなかた)窯だ。

 会津本郷焼は16世紀末、会津若松城改修のために瓦を焼いたことから発展したとされる。宗像窯は、奈良時代に宗像大社(福岡県)から移住し、代々神官をしてきた家系が開窯(かいよう)した。
 箱形をした鰊鉢は、5枚の板を張り合わせて作る。主に使われる茶色の飴釉(あめゆう)は、焼成後に冷ます過程で表面に入るヒビ割れが少ないため、油がしみにくく水漏れも少ないという。「ニシンをおいしく保存する工夫と、力強い直線美が備わっている。シンプルな形の中に会津の風土や暮らしが凝縮され、柳宗悦が民芸運動で唱えた『用の美』を体現しているといえる」と、職員の深田七海さんは話す。
 柳は鰊鉢を「健康な仕事」と評価。1958年のブリュッセル万国博覧会では、出品された宗像窯の鰊鉢がグランプリを受賞した。

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