上絵金彩綾棒踊(あやぼうおどり)図花瓶
山吹色から青色へ。本作品にも見られる鮮やかなグラデーションを得意としたのは明治時代に活躍した京都の窯元・九代帯山与兵衛(1856~1922)。技巧的な造形と華麗な色使いが、海外で高い評価を得た。
桜や藤、ボタンにキジやスズメ、ウグイス。金彩に縁取られた底の広いカップとソーサー、ポットなどには、それぞれ違う花や鳥が細密に描き込まれている。
表面に見られる細かい貫入(かんにゅう)(釉薬のひび割れ)は薩摩焼の特徴だ。裏には「谷口」の銘とともに丸に十字、薩摩藩主島津家の家紋を思わせる印がある。
鹿児島産かと思うと、学芸員の中澤麻衣さんは、「谷口の詳細は不明ですが、加賀(石川県)で作られたのではないかと考えています」と話す。
薩摩藩が1867年のパリ万博に出展し、注目を浴びた薩摩焼。欧米への輸出品として国内の各産地がこれにならって生産するようになり、「京薩摩」「加賀薩摩」などと呼ばれた。
日本の花鳥風月をモチーフにした工芸品は、浮世絵などとともにジャポニスムの流行を生み、19世紀末からのアールヌーボーにも影響を与えた。