読んでたのしい、当たってうれしい。

美博ノート

「工藝(こうげい)」第100号(「工藝」屛風(びょうぶ)・部分)

豊田市民芸館「鈴木繁男 手と眼(め)の創作」

1939年 23.0×15.0センチ 日本民藝館蔵

 民藝運動を主導した柳宗悦は、生涯で一人だけ内弟子を取った。金蒔絵師(きんまきえし)の家に生まれ、漆芸の技術を身に付けた鈴木繁男(1914~2003)だ。

 鈴木は、21歳で目にしたバーナード・リーチや芹沢銈介らの民藝作品に魅了され、感動を和紙に漆で表現した。これが柳の目に留まり、柳邸に住み込むことに。急に収集品を見せられ答えに窮すると「反応が遅い」と一喝されるなど、厳しい指導を受けた。
 知識に頼らず美を見いだす「直観力」を磨いた鈴木は、柳が創刊した雑誌「工藝」の装丁を一任された。本作は記念すべき100号の表紙。千部超全てを鈴木が和紙に漆で手描きした。タイトルや文様に、漆独特の重厚なツヤが見てとれる。学芸員の北谷正雄さんは、「文様や線を生み出す鈴木の力量が伝わる」と話す。柳は鈴木の装丁をとても気に入り、それまでに手がけた36号分の表紙全てを屛風に仕立てるよう指示。本作は右隻に収められている。

 

(記事・画像の無断転載・複製を禁じます。すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

美博ノートの新着記事

  • あやめの衣 洋画のなかに日本の美。シンプルな構図で映える女性と江戸の小袖

  • ぬいとり 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。全3回で、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 三岸節子肖像 開催中の展覧会から注目作品をご紹介する「美博ノート」。今回から3回、一宮市三岸節子記念美術館で開かれている「岡田三郎助 優美な色彩・気品ある女性像」を紹介します。

  • 爆弾散華 碧南市藤井達吉現代美術館で開催中の「川端龍子展」の注目作をご紹介します。

新着コラム