私のイチオシコレクション

輪島塗 石川県輪島漆芸美術館

美しさと堅牢さ 生み出す風土

「朱漆塗八隅膳・椀」 1669年

「朱漆塗八隅膳・椀」 1669年

  • 「朱漆塗八隅膳・椀」 1669年
  • 天野文堂「五福奉寿装身具筥」1935~44年

 石川県輪島市で古くから作られてきた輪島塗。他の産地にない最大の特徴は、下地に珪藻土を混ぜていることです。地元では珪藻土を「地の粉」と呼びますが、粒子の微細な穴に漆の液が染み込み、断熱性に優れた変形の少ない漆器に仕上がります。

 輪島塗発展の背景には、地の粉の採取地があったこと、北前船の寄港地だったことなどが言われています。17世紀の回船業者の記録「寛文雑記」には「輪島そうめん、同椀・折敷」とあり、主要な産品の一つでした。豪商や豪農らから膳と椀のセットの大口注文を受けることで、さらに産地として隆盛しました。

 「朱漆塗八隅膳・椀」にも、1669(寛文9)年作との箱書きがあります。輪島塗と、輪島の作家の作品を保存収集する当館でも最古級の所蔵品で、常設展示しています。350年前に作られたとは思えないほど美しく残っているのは、手間暇をかけた堅牢さゆえ。輪島塗は分業制で、木地職人、下地職人、塗師と、多数の職人の手を経て作られています。漆を塗っては研ぐ作業を繰り返すことで、漆特有のつやが出て、美しい輪島塗ができあがります。

 輪島で初の女性漆芸家となったのが、天野文堂(1896~1952)です。「五福奉寿装身具筥」は、蒔絵師の夫との共作。文堂は、漆面を彫って金粉を埋めることで文様を表す沈金の作家です。朱漆部分に繊細な霊芝文様、内側にはこうもりを描いています。輪島塗は下地が厚く、彫りを加える沈金が発展しました。この作品は、塗りや装飾に輪島らしさが凝縮されています。

(聞き手・中村さやか


 《石川県輪島漆芸美術館》 石川県輪島市水守町四十苅11(問い合わせは0768・22・9788)。午前9時~午後5時(入館は30分前まで)。展示替え期間休館。620円。「五福奉寿装身具筥」は「漆工の吉祥文 祈り・願いの世界」展(7月13日~9月8日)で展示。

学芸員 高津綾乃

学芸員 高津綾乃

 たかつ・あやの 奈良県出身。専門は日本美術史。美術品の中でも特に漆芸品に魅力を感じ、昨年より同館勤務。

(2019年7月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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