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おんなのイケ麺(めん)

一龍斎貞友さん
「蓮玉庵(れんぎょくあん)」の鳥南ばんそば

「蓮玉庵(れんぎょくあん)」の鳥南ばんそば
「蓮玉庵(れんぎょくあん)」の鳥南ばんそば
「蓮玉庵(れんぎょくあん)」の鳥南ばんそば 一龍斎貞友さん

 「そばでも手繰っていくか」と、1992年、弟子入りした貞水師匠のお供で来たのが最初です。

 薦められるままに頂いたのは「鳥南ばんそば」。やわらかくしっとり上品に炊いた鶏肉に、ユズの皮を添えて見た目も華やか。つゆはだしが利いてそばによく絡むんです。そば湯が来る前につゆを飲み干しちゃうほど、大好きな味です。

 声優業で10年が経ったころ、将来への不安から安定した古典芸能で身を固めようと、講談の世界に。中でも、師匠の「緑林五漢録 扇町屋の邂逅」を聴いて、情景が映像になって迫るような語り口に引き込まれたんです。この人について行きたい、と。ところが自分が甘かった(笑)。

 声優を辞して臨もうとしたところ「声優がイヤでないなら、辞めることはない」との師匠の助言に従うことに。初めの5、6年は、弟子の務めである、師匠宅での慣れない家事にあたふたとして、ネタの稽古になかなか身が入りませんでした。厳しい修業のきっかけとなった師匠の演目を耳にすると、今でも目頭が熱くなりますね。

 そんな中、そばを手繰りながら、師匠の話に耳を傾け先人に思いをはせた、思い出深い味なんです。

 ◆東京都台東区上野2の8の7(問い合わせは03・3835・1594)。
 1100円。
 午前11時半~午後6時半。
 (月)、第2・4(火)(祝日の場合は翌日)休み。
 コロナ禍により営業時間は変動有り。要確認。


 いちりゅうさい・ていゆう 講談師、声優。
 声優業の傍ら、1992年に六代目一龍斎貞水に入門、2004年に真打ち昇進。声優業では「ちびまる子ちゃん」のお母さん役や「忍たま乱太郎」の福富しんべヱ役などアニメを中心に活躍中。

(2021年3月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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