弁護士が交通事故のお悩みにお答えします
弁護士の甲野裕大さんが交通事故にまつわるさまざまなお悩みにお答えします。今回の相談者は、交通事故で肩にけがをしたものの、もともと持病があったため保険会社から後遺症に関する賠償の一部について支払いを拒否された方です。持病がある場合でも請求できるのかと悩んでいます。
交通事故で右肩にけがをして後遺症が残ったのですが、もともと肩に持病があったため、「痛みや肩が動かないのは持病のせい」と保険会社に言われ、後遺症に関する賠償の支払いの一部を拒否されています。持病がある場合は請求できないのでしょうか?(滋賀県在住、60代男性)
もともと持病があった部位と同じ場所を交通事故でけがした場合、後遺症が残ったとしても、それが交通事故によるものなのか、持病が悪化したものなのかをめぐって、加害者側の保険会社との間で争いが生じることがあります。問題となる点と対応策について、法的な観点から解説します。
保険会社に「持病のせい」と言われたら
今回のケースのように、痛みや肩の可動域制限はもともとの持病のせいだと保険会社から主張されることがあります。これは法的な観点からすると、交通事故と後遺症との間に「因果関係がない」という主張です。
この場合、こちらとしては「因果関係がある」と主張することになります。持病の症状がどのようなものだったかを具体的に説明したうえで、今回の痛みや肩の可動域制限は交通事故が原因で生じたものだということを示す必要があります。
持病があると賠償額が減ることもある
もう一つ、保険会社から主張される可能性があるのが「素因減額(そいんげんがく)」です。素因減額とは、簡単にいうと、事故によるけがや後遺症に、もともとの持病などが影響している場合、その影響を考慮して、損害賠償額を減額するという考え方です。
たとえば、後遺症のうち持病による影響が20%あると評価された場合、加害者側に請求できるのは賠償額全体の80%に限られます(総額100万円の請求であれば80万円に減額される)。
素因による減額が適用されるかどうかは、もともとの持病が今回の後遺症にどの程度影響しているかを、医学的・法的に検討する必要があります。
持病がある場合の進め方のポイント
今回の相談者のケースでは、保険会社から因果関係を否定されたり、素因減額を主張されたりしている状況といえます。
こちらとしては、今回の痛みや肩の可動域制限は「もともとの肩の持病の影響はない」または「影響があったとしても限定的だ」ということを示す必要があります。
たとえば、肩の持病の部分と今回の交通事故でけがをした部分が厳密には異なり、交通事故でけがをした部位が原因で痛みや可動域制限が生じていることを示すことができれば、持病とは関係がないと主張できます。
そのためには、持病で通院していた病院の医療記録を取り寄せたり、今回の交通事故で通院した病院の医療記録やCT・MRIなどの画像を確認したりして、客観的に証明していく必要があります。
こうした医学的・法的観点からの対応を被害者自身が行うのは大変です。弁護士に依頼すれば、過去の裁判例も踏まえた示談交渉を任せることができます。進め方に悩む場合や負担を感じる場合は、交通事故を取り扱う弁護士に一度相談してみることをお勧めします。
(記事は2026年9月1日時点の情報に基づいています。質問は実際の相談内容をもとに再構成しています)
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