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建モノがたり

天理駅前広場コフフン(奈良県天理市)

古墳から着想、憩いの場

新型コロナウイルス感染予防のため、手前右の「ふわふわコフン」は利用制限あり。「すりばちコフン」は休止中
新型コロナウイルス感染予防のため、手前右の「ふわふわコフン」は利用制限あり。「すりばちコフン」は休止中
新型コロナウイルス感染予防のため、手前右の「ふわふわコフン」は利用制限あり。「すりばちコフン」は休止中 「ふわふわコフン」に寄り添う「ステージコフン」は、段差が客席に。音楽イベントなどを開催してきた

ぐるぐると描いた円みたい。しかも巨大で真っ白。駅前で目を引く、この建物群の正体は?

 天理駅前と商店街を結び、人々が行き交う広場に、白い巨大な水玉模様を描く。円盤や輪っかを積み重ねたような大小五つの建造物は、観光案内所や大型遊具、野外ステージ、大きなテーブルなどだ。

 広場整備計画の公募で選ばれ、デザインを担当したのは、日用品や家具などを手がけるデザインオフィスnendo。佐藤オオキ代表(42)は天理市内に約1600基ある古墳に着想した。

 中でも大きな「ふわふわコフン」は直径26メートル、高さ4・4メートル、皿の上のような上部にトランポリンと砂場があり、子どもたちに人気の施設。駅前のトランポリンも平凡ではないが、採用された工法もユニークだった。

 普通なら現場で型枠にコンクリートを流し込むが、36等分に切り分けたケーキのようなパーツを工場で成形、運んでから組み立てた。形や質感の完成度を高めるためで、量産品のデザインを多く手がける佐藤さんならではの発想だ。同規模の「インフォ&ラウンジコフン」の屋根にも同じ型枠で作ったパーツを逆向きに使うなど、コストを抑える工夫もした。

 「広場全体がカフェや遊具、大きな家具に感じるような空間を目指した」と佐藤さん。「使い方の決まった空間ではなく、市民と一緒に育つゆるやかな場に」と願う。

 広場を管理する市の担当者は「子どもの遊び場、大人が気軽に過ごす場がないのが地域の課題だった。多世代が様々に利用する場になった」と手応えを語った。

(木谷恵吏、写真も)

 DATA

  総合デザインディレクター:nendo
  階数:地上1階
  用途:広場、遊具、休憩施設
  完成:2017年4月

 《最寄り駅》 天理


建モノがたり

 天理駅から車で約10分、石上神宮(いそのかみじんぐう、問い合わせは0743・62・0900)は古代の豪族、物部氏の総氏神。国宝の拝殿は鎌倉時代初期の建立とされる。境内には、神の使いとされるニワトリ約30羽がいる。国宝の剣「七支刀(しちしとう)」など古代の遺品も伝わる。

(2020年7月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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