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建モノがたり

THANK(サンク)(愛知県知立市)

歴史と科学とグローバル

側面から見た外観。左側が旧東海道に面した正面。「THANK」は39番目の宿場にあやかって名付けた
側面から見た外観。左側が旧東海道に面した正面。「THANK」は39番目の宿場にあやかって名付けた
側面から見た外観。左側が旧東海道に面した正面。「THANK」は39番目の宿場にあやかって名付けた 湾曲する天井。木材を市松模様に連ね、スチールロッドを通して編み込むようにした「ニット」を鳥居に似た棟木にかけ渡してある

一面木組みの天井が、まるで布のように垂れ下がる。夕暮れ時、子どもの声が響くこの施設はだれがどうしてつくったの?

 旧東海道39番目の宿場・池鯉鮒(ちりゅう)の本陣があった場所。日中はカフェを訪れる人たちでにぎわい、放課後は小学生が、科学などを英語で学ぶアフタースクール(塾)に通ってくる。開設したのは地元の産業機械メーカー・FUJIだ。

 同社は電子部品実装ロボットなどを主力に手がけ、取引先の多くは海外企業。先端技術を支えるが、一般の人になかなか知ってもらえない。歴史ある土地を活用しながら、広告塔にも地域貢献にもなる新事業に乗り出した。

 コンペで決まったマウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏さん(47)と麻魚さん(44)は二つの案を示した。一つは工期や予算が注文通り収まる案、もう一つは……「チャレンジ、と言ったら社長の目が変わったんです」と麻魚さん。「イノベーションを起こしてきた会社だからこそ提案した」という、初の試みが多い計画が実現することになった。

 「地域の歴史」「自然科学」を大事にしたと真宏さんは振り返る。周囲は寺が多い。通りからカフェ、ホール、教室へと続く構成は、門をくぐり境内・本堂に至る様式にならった。側面から見える屋根は、両端を持った糸が重力で垂れるカテナリーカーブ(懸垂曲線)を描く。自然の現象や原理を子どもたちに五感で感じてほしいという思いが込められている。

 開設から4年。FUJIの細井亘さん(41)は「当時小6だった子は高校生。数年後には社会に出ます。世界に羽ばたいていってほしいですね」。

(吉﨑未希、写真も)

 DATA

  設計:原田真宏+原田麻魚/MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

  階数:地上2階
  用途:複合施設
  完成:2016年7月

 《最寄り駅》 知立


建モノがたり

 併設するthirty nine cafe(問い合わせは0566・84・3378)では、カフェタイム(午後3時~6時)に季節のフルーツパフェなどを提供。午前8時~午後6時。(水)、第1・3(火)休み。

(2020年11月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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